※本記事は添付文書やED診療ガイドラインなど公的資料にもとづく医療情報の一般的な解説であり、診断や処方の代わりにはならない。薬は一般名で記し、特定の製品や医療機関を勧めるものではない。服用の可否は医師・薬剤師に相談してほしい。最終確認日は2026年10月17日。出典の選び方は編集方針に記している。
ED治療の中心は、PDE5阻害薬という飲み薬だ。ED診療ガイドライン第3版(日本性機能学会・日本泌尿器科学会、2018年)は、これを第一選択の治療法と位置づけている。一方で、硝酸薬との併用で血圧が危険なほど下がる、ネットで買った薬に偽物が混ざっているなど、知らずに使うと命に関わる落とし穴もある。この記事では、成分ごとの違い、効き方、禁忌、副作用、個人輸入と偽造薬の危険性を、添付文書、ガイドライン、厚生労働省の情報で整理する。
PDE5阻害薬の要点
PDE5阻害薬とは|勃起のしくみと薬の働き
性的な刺激を受けると、陰茎でNO(一酸化窒素)が出て、cGMPという物質が増える。cGMPが海綿体の平滑筋をゆるめると血液が流れ込み、勃起が起こる。PDE5はこのcGMPを分解する酵素で、陰茎海綿体に豊富にある。PDE5阻害薬は酵素の働きを邪魔してcGMPを保ち、勃起を助ける(ガイドラインの説明)。
大事なのは、薬だけで勃起が起こるわけではない点だ。添付文書は、催淫剤や性欲増進剤ではないと明記している。性的な刺激があって初めて働き、効果も服用時に限られる。日本では処方箋医薬品で、添付文書は、既往歴の調査や検査で客観的に診断し、治療が必要な人に限って使うよう定めている。
日本で使える3つの成分と違い
ガイドライン第3版の時点で、国内で処方できるのはシルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルの3成分だ。主な違いは、効果が出るまでの時間、続く長さ、食事の影響である。
| 項目 | シルデナフィル | バルデナフィル | タダラフィル |
|---|---|---|---|
| 国内発売 | 1999年3月 | 2004年6月 | 2007年9月 |
| 効果発現 | 内服後30〜60分 | 内服後約30分 | 内服後約30分。約36時間続く |
| 血中半減期(健康な日本人、単回) | 約3.4時間 | 約4.0時間 | 約13.6時間 |
| 食事の影響 | 効果発現が遅れる | 高脂肪食で弱まる | 影響なし |
出典はガイドライン第3版(インタビューフォームのデータを引用)だ。シルデナフィルは海外では100mgまであるが、日本で認められているのは50mgまでである。タダラフィルには、前立腺肥大症の治療に使う別の製剤(5mgを毎日)もあり、EDの治療薬とは用途が違う。
どれが一番よいかについて、ガイドラインのクリニカルクエスチョン12は、3剤の有効性や安全性に有意な差はないとする国際的な結論を紹介し、患者の選択に任せることを強く推奨している。直接比べた大規模な試験はなく、メタアナリシスでも、2015年はシルデナフィル50mgの有効率が最高でタダラフィル10mgの安全性が最高、2013年はタダラフィルが最も有効、2009年は差なしと、結果が分かれている。
効き方と、効かないと感じたとき
ガイドラインが紹介する12週間の試験では、「勃起が改善した」と答えた人は、シルデナフィルで76%(プラセボ22%)、バルデナフィルで69%(同26%)だった。タダラフィルは、軽度から中等度のEDの1,112人で41〜81%(プラセボ35%)だった。試験ごとに対象や評価が違うため、数字で優劣はつけられない。
効かないときは、まず使い方を見直す。シルデナフィルが無効と紹介された236人の研究では、ビデオや教材での再教育で98人(41.5%)が有効になり、初期の失敗の81%は、油っこい食事のあとの服用、性的刺激がない状態での服用、タイミングの間違い、数回しか試さなかったなど、服用方法の問題だった。ネットなどで入手した薬だと、そもそも正規品でない可能性もあり、ガイドラインは、まず本物を使っていたかを確認するよう求めている。
添付文書では、服用は1日1回までで、間隔は24時間以上あける。効かないからと自己判断で増やしたり、複数のED治療薬を重ねたりするのは避けたい。添付文書は、他のED治療薬との併用の安全性は確立していないとしている。
禁忌・併用禁忌|使う前に必ず確認すること
最も重要なのは、硝酸剤や一酸化窒素(NO)供与剤との併用だ。ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド、ニコランジルなどが該当し、併用すると降圧作用が強まって、血圧が過度に下がるおそれがある。添付文書は、服用の前だけでなく、服用中と服用後もこれらが使われないよう注意することを求めている。主な禁忌は次のとおりだ(シルデナフィル製剤は2024年7月、タダラフィル製剤は2024年11月改訂の添付文書)。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 併用禁忌の薬 | 硝酸剤・NO供与剤/リオシグアト(肺高血圧症の薬)/アミオダロン経口剤(シルデナフィルの添付文書) |
| 心臓・血圧 | 心血管系障害があり性行為が不適当な人/血圧90/50mmHg未満、またはコントロール不良の高血圧(安静時170/100mmHg超)/6か月以内の脳梗塞・脳出血/最近の心筋梗塞(シルデナフィルは6か月以内、タダラフィルは3か月以内)/不安定狭心症、性交中の狭心症の経験(タダラフィル) |
| 肝臓・目など | 重度の肝機能障害/網膜色素変性症/成分への過敏症の既往 |
| 慎重に使う場合 | 高齢者、肝・腎機能障害(シルデナフィルは25mgから)/陰茎の変形・ペロニー病/持続勃起症になりやすい病気(鎌状赤血球症、多発性骨髄腫、白血病)/出血性疾患、消化性潰瘍 |
バルデナフィルは、ガイドライン第3版の整理では、一部の抗HIV薬や抗真菌薬、透析患者、QT延長症候群、一部の抗不整脈薬が禁忌で、他の2剤と範囲が違う。成分ごとに最新の添付文書を確認する必要がある。また、CYP3A4阻害薬(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、シメチジン、グレープフルーツジュースなど)との併用では用量を制限する薬があり、α遮断薬(前立腺肥大症などの薬)を使う場合はシルデナフィルとバルデナフィルを低用量から始める。飲み合わせは薬剤師に確認してほしい。
硝酸薬を使っている人が、自分の判断で硝酸薬をやめてはならない。ガイドラインは、硝酸薬を使う患者のED治療の相談を受けた主治医236人のうち42%が、中止可能と答えた調査を紹介している。ただし、中止できるかどうかは、病状を知る主治医が決めることだ。高血圧や糖尿病など心血管疾患のリスク因子がある人には、クリニカルクエスチョン14が、プリンストン・コンセンサスの勧告に沿って評価・管理したうえでの使用を強く推奨している。性交は約1.6kmの平地を20分かけて歩く運動に匹敵するとされ、どの程度の運動に耐えられるかも確認が必要だ。
副作用|よくあるものと、すぐ受診すべきもの
ガイドラインによると、主な副作用の多くは軽度で一過性だ。日本の臨床試験の発現率は次のとおりで、試験ごとに条件が違うため目安にとどめる。
| 副作用 | シルデナフィル(25・50mg) | バルデナフィル(5・10・20mg) | タダラフィル(5・10・20mg) |
|---|---|---|---|
| 頭痛 | 12.74% | 5.59% | 11.30% |
| ほてり | 10.19% | 15.66% | 3.50% |
| 消化不良 | 0.64% | 0.99% | 2.30% |
| 鼻づまり | 0.00% | 2.96% | 1.20% |
| 眼症状 | 1.91% | 1.53% | 1.20% |
| 背部痛 | 0.00% | 0.00% | 1.90% |
頻度は低いが重くなりうる副作用もある。ひとつは急な視力の低下や視野の欠けで、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)が2005年ごろから報告されている。添付文書は、急激な視力低下や視力喪失があれば服用を中止し、速やかに眼科専門医を受診するよう定めている。突然の難聴の報告もあり、聴力の異常があれば服用を中止して耳鼻科を受診する。持続勃起症は極めてまれだが、添付文書は、勃起が4時間以上続く場合に直ちに医師の診断を受けるよう求めている。放置すると陰茎組織が傷つき、勃起機能が永続的に損なわれるおそれがある。めまいや視覚の異常もあるため、運転や機械の操作にも注意が必要だ。前立腺がん術後のPSA再発やメラノーマとの関連を調べた研究もあるが、結果は分かれており、さらなる検討が必要とされている。
どこで入手できるのか|処方と、2026年の市販化
国内のED治療薬は、長く処方箋医薬品だけだった。ガイドラインは、保険適用がなく高価なうえ羞恥心もあり、偽造薬の大きな標的になっていると述べている。
2026年5月20日、厚生労働省はタダラフィル10mg錠を、処方箋が不要な要指導医薬品として承認した。ED治療薬が処方薬から市販薬になるのは国内で初めてで、厚生労働省の一覧では販売開始日が2026年7月31日とされている。報道によると、薬局などでは薬剤師の指導のもと18歳以上かを確認して販売し、オンライン販売では遠隔での面談後に発送される。薬の性質は変わらないため、前節の禁忌や併用禁忌には同じ注意が必要だ。持病や飲んでいる薬を伝え、薬剤師の確認を受けることが前提になる。
個人輸入・偽造薬の危険|厚生労働省とガイドラインが示す事実
ガイドラインは、2008年8月から2009年4月に日本とタイでウェブサイトから入手したPDE5阻害薬3剤の調査を紹介している。偽造薬の割合は日本で43.6%、タイで67.8%だった。偽造薬には、表示の0〜200%しか成分が入っていないもの、タルクや塗料、印刷インクなどの不純物を含むもの、アンフェタミンやメトロニダゾールなど別の薬物を含むものが報告されている。
日本でも重い被害が出た。2011年には偽造タダラフィル、2015年には偽造シルデナフィルに含まれていた血糖降下薬グリベンクラミドで、重い低血糖発作を起こした例が報告されている。2011年の奈良県の報道発表でも、国立医薬品食品衛生研究所の検査で、タダラフィル製剤を装った正規品にない規格の模造品から、表示と異なる成分(シルデナフィル)が検出されている。
厚生労働省の「あやしいヤクブツ連絡ネット」は、個人輸入のリスクを次のように整理している。日本の医薬品医療機器等法にもとづく品質・有効性・安全性の確認がされていない。副作用が出たときの対処が分からない。偽造品や不衛生な環境で作られた製品の可能性もある。重い健康被害が出ても、医薬品副作用被害救済制度の対象にならない。個人輸入は自分で使う分に限られ、他人への販売や譲渡は認められない。
健康食品にも注意が必要だ。厚生労働省は2008年に、健康食品からPDE5阻害薬に似た成分(ノルホンデナフィルなど)が検出された例を公表している。令和6年度の買上調査でも、健康食品等141製品中1製品、ネット販売の健康食品18製品中2製品から医薬品成分が検出された。同じ年にネットで買った海外製医薬品28製品では表示と異なる成分は見つからなかったが、調査の対象は限られ、安全の保証にはならない。
受診の目安|薬を使う前と、使ったあと
次に当てはまる場合は、使う前に医師か薬剤師に相談してほしい。
- 狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全などがある。硝酸薬(舌下錠、貼り薬、スプレーなど)を使っている
- 血圧が高い、または低い。脳梗塞や脳出血の経験がある
- 重い肝臓・腎臓の病気、網膜色素変性症などの目の病気がある
- 抗HIV薬、抗真菌薬、抗不整脈薬、前立腺肥大症の薬、降圧薬などを飲んでいる
- 陰茎の変形、持続勃起症の既往、血液の病気がある
使ったあとに次の症状が出たら、服用を中止して早めに受診してほしい。
- 勃起が4時間以上続く(直ちに受診)
- 急な視力の低下、視野の欠け(眼科)
- 聴こえにくさ、耳鳴り、めまい(耳鼻科)
- 胸の痛み、強い動悸、息苦しさ、意識が遠のく感じ(すぐに救急受診)
- 効かない、副作用が気になる(自己判断で増量せず、医師に相談)
まとめ
PDE5阻害薬は、国内ではシルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルの3成分が使われ、ED診療の第一選択とされている。有効性は高い一方、硝酸薬やリオシグアトとの併用は禁忌で、心血管の状態の確認も欠かせない。副作用の多くは頭痛やほてりだが、視覚・聴覚の異常や4時間以上の勃起は、すぐ受診が必要だ。2026年にはタダラフィル10mgが要指導医薬品になったが、確認すべき内容は変わらない。個人輸入やネットで買った薬には偽造のリスクがあり、重い低血糖などの被害も出ている。医師や薬剤師に相談し、正規の経路で入手してほしい。サイトの読み方ははじめての方へを参照してほしい。
よくある質問
Q. 3つの成分のうち、どれが一番効くのか?
A. ガイドラインは、有効性や安全性に有意な差はなく、患者の選択に任せることを強く推奨している。持続時間や食事の影響が違うため、医師と相談して決める。
Q. ED治療薬を飲むと性欲は高まるのか?
A. 高まらない。添付文書は、催淫剤や性欲増進剤ではないと明記している。性的な刺激があって初めて働く薬だ。
Q. 狭心症の薬(ニトログリセリンなど)を使っている場合、併用できるのか?
A. 併用できない。硝酸剤やNO供与剤は併用禁忌で、血圧が過度に下がるおそれがある。自己判断で薬を中止せず、主治医に相談してほしい。
Q. ネットや海外のサイトの薬は、安ければ正規品なのか?
A. 値段では判断できない。厚生労働省は、個人輸入の医薬品には偽造品や不衛生な製造の可能性があり、重い被害が出ても救済制度の対象にならないと注意している。ガイドラインも、日本でウェブサイトから入手した薬の43.6%が偽造薬だった調査を紹介している。
Q. 市販のED薬ができたが、医療機関に行かなくてよいのか?
A. 2026年にタダラフィル10mgが要指導医薬品として承認され、薬剤師の指導を受けて買えるようになった。ただし禁忌や併用禁忌は残る。EDは糖尿病や血管の病気のサインのこともあるため、改善しない場合や持病がある場合は医療機関で相談してほしい。
参考にした資料
- 日本性機能学会・日本泌尿器科学会『ED診療ガイドライン[第3版]』(2018年、全文PDF) https://www.jssm.info/guideline/files/EDguideine03_s.pdf
- PMDA 医療用医薬品情報(シルデナフィル製剤の添付文書、2024年7月改訂) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/671450_2590018F1020_1_05
- PMDA 医療用医薬品情報(タダラフィル製剤の添付文書、2024年11月改訂) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/530263_2590016F5026_1_05
- 厚生労働省「要指導医薬品一覧」(2026年10月8日更新) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/yoshidoiyakuhin.html
- 共同通信「ED治療薬、市販化を承認 国内初、薬剤師の指導必要」(2026年5月20日、熊本日日新聞掲載) https://kumanichi.com/articles/1993275
- 厚生労働省 あやしいヤクブツ連絡ネット「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」 https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/risk/
- 同「個人輸入やインターネット購入による健康被害」(買上調査の結果を含む) https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/health_damage/
- 同「偽造医薬品(タダラフィル製剤を装ったもの)による健康被害に対する注意喚起」(奈良県の報道発表、2011年) https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/health_damage/unauthorized/counterfeit_cialis.html
気になる症状があるときは
この記事は一般的な情報で、診断や治療の代わりではない。症状が続くときや不安が強いときは、泌尿器科・性感染症外来などの専門医に相談してくれ。保健所では、HIV・梅毒などの検査を無料・匿名で受けられる地域もある。
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