遊廓、花街、赤線。似た言葉が並ぶのに、何がどう違うのか、はっきり説明できる人は少ない。町の名前は知っていても、いつ生まれ、なぜ動き、どうやって終わったのかとなると、さらに曖昧になる。
このページは、遊廓の定義と用語の違い、娼妓と芸妓を分けた法律、戦後の呼び名、文化財になった建物の概説4本と、近畿・東海・中国・四国・九州・沖縄の旧遊廓と花街26本をまとめた地図だ。東日本は別の柱にまとめてある。どの記事も、公的資料や研究、自治体の資料で確認できた範囲だけを書いている。
このページの使い方
用語や制度から知りたいなら、最初のグループの4本から入れ。特定の町を調べたいなら、ロードマップで地域の行を探せ。地域ごとの一覧記事で全体をつかんでから、個別の町の記事へ進むと迷わない。各記事の中身は、グループごとの要点で2行ずつ確認できる。
要点
- 遊廓と花街を分ける軸は、「何を売るか」「どの法令に縛られたか」「どこで営業できたか」の3つ
- 赤線・青線・白線は法律用語ではなく俗称。警視庁の国会証言が根拠で、白線は地域でなくやり方を指した流行語
- 1929年の貸座敷の指定地は全国で541か所。公娼地域としての遊廓の歴史は、1958年4月1日の売春防止法の全面施行で終わった
- 町の移転や変化のきっかけは、大火、戦争、鉄道の開通、都市計画、法律改正など、土地ごとに違う
- 年号や数字は資料で食い違う。子記事は、どの出典の数字かを書いて併記している
- 営業が続く地域は、歴史と法的な位置づけの確認だけ。店の紹介や利用の案内には触れない
悩み別・読む順番ロードマップ
知りたいことや地域に近い行から入れ。30本すべてが、どこかの行に載っている。
| 悩み・場面 | 読む記事 |
|---|---|
| 遊廓って何か、花街とどう違うか | 遊廓の全体像、遊廓と花街の違い |
| 赤線・青線・白線の意味 | 赤線・青線・白線 |
| 残っている建物、文化財になった建物 | 遊郭建築の文化財 |
| 近畿の旧遊廓を一覧で、京都・大阪の跡 | 近畿の一覧、京都の旧遊廓・花街跡、大阪の旧遊廓・新地跡、橋本 |
| 飛田新地、今里新地、信太山新地の歴史と位置づけ | 飛田新地、今里新地、信太山新地 |
| 奈良・滋賀・三重の遊里と温泉地 | 木辻、彦根・長浜、雄琴温泉、伊勢・古市 |
| 名古屋と岐阜 | 名古屋・大門、金津園 |
| 中国・四国の旧遊廓 | 中国・四国の一覧、広島、下関 |
| 四国の城下と港町 | 道後、高松、高知 |
| 九州・沖縄の旧遊廓を一覧で | 九州・沖縄の一覧 |
| 福岡・佐賀・熊本・大分 | 博多・柳町、佐賀・室園、熊本・二本木、別府・浜脇 |
| 鹿児島と沖縄(基地の街) | 鹿児島・沖之村、コザ |
概説|用語・法律・文化財
まず言葉と制度の整理から。ここを押さえると、地域別の記事で出てくる呼び名や年号が読みやすくなる。
- 日本の遊廓とは?成り立ち・種類・全国の主な遊廓と跡地の現在を一覧で解説 遊廓の定義と公許・非公許の区別、似た言葉の違い、江戸から1958年までの年表。1929年は貸座敷の指定地が全国541か所。地域別の一覧つき。
- 遊廓と花街の違い|娼妓と芸妓を分けた法律と、混ざった現実 分かれ目は商品・法令・営業地域の3つ。娼妓取締規則や警視庁の国会証言をもとに、境がにじんだ実例も示す。
- 赤線・青線・白線とは?戦後の区分と場所の見分け方 赤線・青線・白線は法律用語でなく俗称。それぞれが指した地域と1950年代の数字を、調査主体ごとに分けて整理。
- 遊郭建築が文化財に|重要文化財・登録有形文化財になった旧遊廓・花街の建物を一覧で解説 角屋・志摩(重要文化財)、鯛よし百番・旧川本家住宅(登録有形文化財)、輪違屋(京都市指定)など15件。解体された建物も扱う。
近畿の旧遊廓と花街(京都・大阪)
近畿は一覧記事で全体をつかんでから、京都・大阪の個別記事へ入るのがいい。営業が続く地域は、歴史と法的な位置づけの確認に絞っている。
- 近畿の遊郭跡|島原・新町・飛田・五条楽園ほか旧遊廓の場所と今の姿を一覧で解説 京都・大阪・兵庫・奈良・三重の21地点を一覧にした。島原・新町・松島・飛田・福原・五条楽園などの成り立ち、終わり、跡地、文化財。
- 京都の旧遊廓・花街跡とは?島原・五条楽園・祇園を歩く歴史と今 島原・五条楽園・橋本の順に、歴史と現存建築を整理。現役の花街は外から見られる範囲に留め、私道や撮影の注意点も載せた。
- 大阪の旧遊廓・新地跡とは?新町・飛田・松島を歩く歴史と今 新町・飛田・松島を中心に、今里・信太山・堺も。成り立ちと終わり、碑や史跡、営業が続く地域での撮影や住民への配慮。
- 飛田新地の歴史と現在|成り立ち・「料亭」の形と法律上の位置づけ 火事から計画された遊廓。1957年の国会報告、売春防止法の条文、2025年の警察庁の答弁を整理した。営業の案内はしない。
- 今里新地とは?歴史・場所・花街としての成り立ちと今の姿 松島遊郭の過密を受け、1927年末に芸妓居住地に指定され、1929年に営業を開始。1938年の規模、戦後の赤線、1958年以降の変化。
- 信太山新地とは?歴史・場所・成り立ちを旧遊廓との違いから解説 戦前の公認遊廓ではなく、1919年の野砲兵第四聯隊の移駐で軍の町になった土地に、戦後の青線として1952年ごろ成立。俗説も検証した。
奈良・八幡・滋賀・三重の遊里
城下町、宿場、門前町、温泉地。成り立ちの違う町を並べて読むと、遊里が生まれる条件の違いが見えてくる。
- 木辻遊廓とは?奈良の遊廓の歴史・場所・ならまち周辺の今の姿 江戸初期の茶店に始まり、近世の公認、明治の置屋街、1958年の廃業と旅館への転業、2022年の旧妓楼の解体まで。
- 橋本遊廓とは?京都・八幡の歴史・場所・現存する建物と今の姿 明治に再興され、1910年の京阪開通で拡大し、1958年に終わる。旧三桝楼など現存する妓楼建築と、出典で数字が違う点の表。
- 彦根・袋町と長浜・南片町とは?滋賀の遊廓の歴史・場所・今の姿 城下町の彦根・袋町と門前町の長浜・南片町。明治の公認、昭和初期の規模、1958年の終わりと袋町の現在。
- 雄琴温泉とは?歴史・温泉街の成り立ちと風俗街ができた経緯・今の姿 最澄開湯の伝承を持つ温泉地。万博の特需、1966年の法改正と区域の線引き、その後の街の変化と旅館街の再生を年号で追う。
- 伊勢・古市遊廓とは?精進落としの歴史・場所・跡地の今の姿 お伊勢参りの精進落としの遊里。天明期の妓楼70軒、油屋騒動、1945年の空襲、資料館や比翼塚が残る跡地。
東海・中国・四国の旧遊廓
都市の移転計画、軍都、港町。大きな出来事に町がどう巻き込まれたかを、年表つきで読める。
- 名古屋・大門とは?中村遊廓への移転から戦後までの歴史・場所・今の姿 旭廓が大須から中村へ移った経緯、五町のひとつの大門、戦後の名楽園から1958年の転廃業、跡地が住宅地や商店街に変わるまで。
- 金津園(金津遊廓)とは?岐阜の歴史・場所・移転の経緯と今の姿 1888年の開業と県内最大の規模、戦時中の手力への移転、1950年の加納水野町への一斉移転、売春防止法後の変化を歴史として整理。
- 中国・四国の遊郭跡|旧遊廓の場所・成り立ち・今の姿を一覧で解説 鳥取の衆楽園、岡山の中島、広島・呉・尾道、鞆や御手洗、下関、徳島・高松・高知まで。1929年の規模の数字と資料で読む。
- 薬研堀・流川とは?広島の歓楽街の歴史・遊廓・原爆後の復興 日清戦争の軍需景気で生まれた東遊廓と東券番、大正の新天地、原爆による焼失、戦後の復興とお好み村まで。
- 下関の遊廓とは?稲荷町・豊前田・新地の歴史・場所・今の姿 北前船の港町として栄えた近世の稲荷町、下級遊女の町だった豊前田、明治の新地、1945年の空襲、1958年の終わり。
- 道後の松ヶ枝遊廓(ネオン坂)とは?松山の歴史・場所・今の姿 江戸の十軒茶屋、明治の公認と『坊っちゃん』、戦後のネオン坂歓楽街、1958年の終わりと、宝厳寺の再建と上人坂の再生。
- 高松の遊廓・八重垣新地(城東町)とは?歴史・場所・今の姿 東浜港の埋立てと明治初めの成立、『全国遊廓案内』の規模、1945年の高松空襲、赤線を経た戦後、町名の変遷。
- 高知の玉水新地(玉水町遊廓)とは?歴史・場所・今の姿 1872年の許可、稲荷・吸江と並ぶ三新地、高知大空襲を免れた経緯、1958年の終わりと、用水路や石橋が残る町並み。
九州・沖縄の旧遊廓
長崎の丸山から那覇の辻まで。城下町、軍都、温泉地、基地の街と、成り立ちの違いが大きい地域だ。
- 九州・沖縄の遊郭跡|丸山・中洲・辻ほか旧遊廓の場所と今の姿を一覧で解説 長崎の丸山、熊本の二本木、福岡の新柳町と中洲、鹿児島の山ヶ野、那覇の辻や仲島まで。1929年の規模の数字つきの一覧。
- 博多の柳町遊廓とは?歴史・場所・新柳町への移転と今の姿 1605年の移転と官許、福岡藩の取締、明治末の大学誘致による新柳町(現・中央区清川)への移転、1958年の終わり。
- 室園遊廓(佐賀)とは?歴史・場所・室園橋と跡地の今の姿 上芦町からの移転、水運の町という背景、昭和初期の貸座敷17軒・娼妓140人の規模、橋の欄干に刻まれた妓楼名。
- 二本木遊廓(熊本)とは?歴史・場所・東雲楼と跡地の今の姿 1877年の西南戦争後に京町から移った経緯、軍都熊本との関係、東雲楼と日本亭、1958年の組合解散、跡地の手がかり。
- 別府の花街・遊廓とは?浜脇と流川の歴史・場所・今の姿 貸座敷の中心が流川から浜脇へ移った明治の変化、芸者の町となった流川・楠、観光都市としての発展と1958年の終わり。
- 鹿児島の遊廓・沖之村(常盤遊廓)とは?歴史・場所・今の姿 県内唯一の公許遊廓。1899年の移転、『全国遊廓案内』が載せる規模、戦時中の空襲、1958年の終わり、山之口との混同。
- コザ(沖縄市)の特飲街とは?八重島・照屋など基地の街の歴史と今の姿 嘉手納基地の門前に生まれた基地の街。1950年の八重島、オフリミッツとAサイン、売春防止法の適用時期、コザ騒動。
用語の早見表|似た言葉をどう読み分けるか
古い資料では、同じ言葉が別の意味で使われることがある。地域別の記事を読む前に、ここで大づかみにしておけ。細かい定義と例外は概説の記事にある。
| 言葉 | 指したもの | ポイント |
|---|---|---|
| 遊廓 | 公許の遊女屋を集めて囲った区画。近代は貸座敷営業地の通称 | 近世の代表は吉原・島原・新町。1958年まで |
| 岡場所 | 江戸時代、公許の外にあった遊所・私娼街 | 天保の改革で1842年に江戸の岡場所が取りつぶされた |
| 新地 | 新しく開かれた遊所や花街 | 統一的な定義はなく、時代と土地で意味が違う |
| 花街 | 芸妓(芸者)を呼ぶお茶屋・置屋・料理屋が集まる地域 | 1958年まで、多くの花街で芸妓と遊女が併存していた |
| 赤線 | 1946年の公娼制度廃止後、警察が黙認した特殊飲食店街 | 旧遊廓の多くが料亭やカフェーに看板を替えて続いた |
| 青線 | 保健所の飲食店許可だけで営業した地域 | 赤線の外で、組合にも入らなかった |
| 白線 | 地域でなく「やり方」を指した流行語 | 法律用語ではなく俗称 |
町が生まれ、動いたきっかけ別の例
個々の町の記事を横に並べると、動かしたものが見える。年号の細部は各記事で確かめろ。
| きっかけ | 例 | 記事 |
|---|---|---|
| 大火の後の代替地 | 1912年の難波新地の大火のあと、飛田が計画された | 飛田新地 |
| 戦争・軍の駐屯 | 日清戦争の軍需景気の広島、西南戦争後の熊本、野砲兵第四聯隊の移駐で軍の町になった信太山 | 広島、熊本、信太山 |
| 鉄道・航路の開通 | 1910年の京阪開通で拡大した橋本、宇高連絡船で四国の玄関口になった高松 | 橋本、高松 |
| 都市の計画・移転問題 | 大学誘致で新柳町へ移った博多、移転問題が続き中村へ移った名古屋 | 博多、名古屋 |
| 空襲・原爆 | 1945年の高松空襲、下関の空襲、原爆で焼けた広島。高知は大空襲を免れた | 高知、下関 |
| 法律 | 1958年の売春防止法の全面施行。転業先や終わり方は町ごとに違う | 遊廓の全体像 |
資料を読むときの注意|年号や数字が割れるところ
- 成立の年は、「許可」「開業」「移転」のどれを指すかで変わる。今里新地は開設年の揺れを、道後の松ヶ枝遊廓は1877年説と1878年説を併記している
- 規模の数字は、出典で違う。橋本遊廓は数字の違いを表にし、佐賀の室園遊廓は資料ごとの数字を並べている
- 彦根の袋町は、成立の年号が資料によって異なる。1つの年号だけ書いてある記事は、出典を見ろ
- 売春防止法は、1956年に公布され、1958年4月1日に全面施行。「1957年成立」と書く資料もある
よくある質問
遊廓と花街は何が違う?
分かれ目は、何を売るか、どの法令に縛られたか、どこで営業できたかの3つだ。娼妓取締規則が遊廓を制度にし、芸妓は別に扱われた。ただし両者の境がにじんだ実例もある。 詳しくは遊廓と花街の違いの記事、遊廓の全体像の記事へ。
赤線・青線・白線は、法律上の言葉?
法律用語ではなく俗称だ。赤線は旧指定地に残った黙認の地域、青線は赤線の外で組合にも入らず営業した区域、白線は地域でなくやり方を指した流行語だった。 詳しくは赤線・青線・白線の記事へ。
遊廓の建物は、いまも見られる?
国の重要文化財の角屋と志摩、登録有形文化財の鯛よし百番などがある。一方で、指定されても残らなかった建物や、2022年に解体された木辻の旧妓楼のような例もある。 詳しくは文化財の記事、木辻の記事へ。
飛田新地は、合法なのか違法なのか?
この柱では断定しない。売春防止法が罰するのは勧誘・周旋・場所の提供・管理などで、店の形や看板だけで決まらない。2025年の国会で警察庁は、個別具体の事実を踏まえて判断すると答えた。営業の案内はしない。 詳しくは飛田新地の記事へ。
遊廓は、いつ終わった?
1946年のGHQの指令で公娼制度が廃止され、多くは赤線として続いた。売春防止法が1958年4月1日に全面施行され、公娼地域としての遊廓の歴史が終わる。沖縄のコザは、適用時期が本土と違う。 詳しくは遊廓の全体像の記事、コザの記事へ。
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- 日本の性文化史ガイド(成人映画・出版・表現史) 遊廓の外側、成人映画や出版の歴史と表現の変遷を知りたいなら、こちらの柱が次の一歩になる。
まとめと次の一歩
遊廓の歴史は、言葉の定義、法令、町の事情の3つを押さえると、一気に読みやすくなる。まず概説の4本で物差しをつくって、気になる地域の一覧記事から個別の町へ進め。現地を歩くなら、いまも人が暮らす町として静かに歩け。
最終確認日:2026年10月
