正直に答えろ。「セット料金いくらですか?」と聞いて、その金額が会計の総額だと思っていないか?
これが、最初に引っかかる落とし穴だ。接待を伴う店の会計は、基本のセット料金に、延長、指名、ドリンク、サービス料、消費税が積み重なって決まる。積み上がり方は店ごとに違う。そして、セット料金は総額のほんの一部にすぎないことが多い。
国民生活センターの注意喚起を載せた京都府の資料には、予想とまったく違う高額な請求をされる「ぼったくりバー」の相談が寄せられていると書かれている。ぼったくりと、単に「思っていたより高かった」会計は別物だが、共通点がある。入る前に総額のイメージを持っていなかったことだ。
この記事は、料金の仕組みを分解して、架空のモデルで計算してみせる。数字はすべて計算を見せるために当サイトで仮に置いたもので、相場や特定の店の料金ではない。法律の条文や、国税庁の消費税の税率といった確認できる事実だけを根拠にして、あとは計算の仕方を教える。分かることは次の6つ。
- 会計を構成する項目(セット・延長・指名・同伴・ドリンク・サービス料・税)
- 架空モデルでの3つの会計例と、基本料金に対する総額の倍率
- サービス料の率で総額がどう動くか(早見表)
- 税とサービス料の「計算の順番」で3%ずれる理由
- 入店前に聞く質問リストと、予算の立て方
- 料金の支払いに関して、店に禁じられていること
先に要点だけ
- 会計は「セット+延長+指名+同伴+ドリンク+ボトル」の小計に、サービス料と消費税が上乗せされる形が多い
- サービス料率が違えば総額は大きく変わる。率と計算の順番は、座る前に必ず聞く
- 風俗営業者には、料金を営業所で客に見やすく表示する義務がある(風営法第17条)
- 料金の支払いに充てるため風俗店で働くことなどを、威迫・誘惑して要求する行為は、接待飲食営業に禁じられている(第22条の2)
会計は「小計」に「上乗せ」が乗って決まる
結論から言う。会計の仕組みは、2段構えだ。まず、時間や指名やドリンクなどを積み上げた小計が決まる。次に、その小計にサービス料や消費税が上乗せされる。上乗せの率は店によって違うし、計算の順番も違う。
下の表が、会計を構成する項目の一覧だ。呼び名は店によって違い、制度のない店もある。ここに挙げたのは一般的な項目で、特定の店のルールではない。
| 項目 | 何の対価か | 入店前に聞く質問 |
|---|---|---|
| セット料金 | 基本の時間分(例:60分)の席と接客 | 何分で、何が含まれるか(飲み放題の範囲) |
| 延長料金 | セット時間を超えた分 | 延長は何分単位か。延長の意思確認はあるか |
| 指名料 | 特定の従業員を指定した場合 | 本指名と場内指名で金額が違うか |
| 同伴料 | 来店前に待ち合わせて一緒に入店する場合 | 制度があるか。同伴の前の食事代は別か |
| ドリンク | 客が追加した飲み物、従業員に勧めた飲み物 | 従業員のドリンクは誰が頼み、いくらか |
| ボトル | キープや提供する酒のボトル | 金額とキープ期限 |
| 席料・チャージ | 座った時点でかかる料金 | 別途かかるか |
| サービス料 | 店が定める割合で上乗せされる料金 | 率はいくらか。何に対してかかるか |
| 消費税 | 税。標準税率は10%(国税庁) | 税込表示か税別表示か |
この表のなかで、見落としやすいのは「従業員のドリンク」と「サービス料の率」だ。前者は注文した覚えがなくても会計に入っていることがあるし、後者は率が違うだけで総額が1割以上動く。座る前に口頭で確認してくれ。
架空モデルで会計を組んでみる。基本料金の何倍になるか
ここから計算に入る。条件は次のように仮置きした。繰り返すが、これは相場じゃない。計算の仕組みを見せるための数字だ。2026年10月時点の、当サイトの架空モデルである。
- 60分セット 7,000円、延長30分 3,500円
- 本指名料 2,500円、場内指名料 1,500円、同伴料 3,000円
- 客のドリンク1杯 1,000円、従業員のドリンク1杯 1,500円、ボトル1本 15,000円
- サービス料 30%、消費税 10%
3つの夜を組んだ。Bの小計の内訳は、60分セット7,000円、延長30分3,500円、本指名料2,500円、客のドリンク2杯2,000円、キャストのドリンク2杯3,000円で、合計 18,000円。Cの小計の内訳は、60分セット7,000円、延長30分×2回7,000円、同伴料3,000円、本指名料2,500円、場内指名料1,500円、客のドリンク3杯3,000円、キャストのドリンク4杯6,000円、ボトル1本15,000円で、合計 45,000円になる。
| 夜 | 条件 | 小計 | 総額(サービス料にも税がかかる計算) | 総額(サービス料と税を単純加算) | 基本セットの何倍か |
|---|---|---|---|---|---|
| A 最小の夜 | 60分・指名なし・ドリンク追加なし | 7,000円 | 10,010円 | 9,800円 | 約1.4倍 |
| B 標準的な夜 | 90分・本指名1名・ドリンク計4杯 | 18,000円 | 25,740円 | 25,200円 | 約3.7倍 |
| C 盛り上がった夜 | 120分・同伴・指名と場内指名・ドリンク計7杯・ボトル1本 | 45,000円 | 64,350円 | 63,000円 | 約9.2倍 |
この表から3つのことが読み取れる。1つ目は、同じ「60分7,000円」のセットから始めても、夜の中身で総額が数倍に開くことだ。Aは10,010円だが、Cは64,350円になる。2つ目は、サービス料と税を上乗せすると、小計の1.4倍台になることだ。3つ目は、同じ小計でも、計算の順番で総額が変わることだ。次の節で説明する。
たとえば、こんな場面を想像してくれ。Bの夜、会計で出てきた金額を見て「セット7,000円のはずなのに、なぜ4倍近いんだ」と驚く。ところが明細を見れば、延長、指名、ドリンクの積み上げで説明がつく。驚きの原因は店の悪意とは限らず、入る前の計算がなかったことなんだ。
サービス料の率と「計算の順番」で、総額は大きく動く
サービス料の率は、法律で決まっているわけじゃない。店が自分で決めて表示する。だから、座る前に率を聞く。下の表は、小計が20,000円の場合、サービス料の率だけを変えたときの総額だ。
| サービス料の率 | 倍率(税もかかる計算) | 総額の例(小計20,000円) | 総額(単純加算) |
|---|---|---|---|
| 0% | 1.10倍 | 22,000円 | 22,000円 |
| 20% | 1.32倍 | 26,400円 | 26,000円 |
| 30% | 1.43倍 | 28,600円 | 28,000円 |
| 40% | 1.54倍 | 30,800円 | 30,000円 |
見ての通り、率が10ポイント違うだけで総額は2,000円以上動く。さらに、「サービス料にも消費税をかけるのか」「サービス料と税を単純に足すのか」で、同じ率でも数%ずれる。どちらが正しい、という話じゃない。店の料金表の書き方で決まる。座る前に「サービス料の率と、税の計算の順番を教えてください」と聞け。聞けない店、答えない店は、その時点で見送るのが無難だ。
国税庁の質疑応答には、サービス料や席料(テーブルチャージ)が、飲食物の提供に係る対価の一部として扱われるという考え方が示されている(簡易課税の事業区分に関する照会)。ただし、これは簡易課税の事業区分に関する照会への回答で、客への請求でサービス料にも消費税をかけるかどうかは、店の料金表示の書き方で決まる。
入店前の質問リスト。これだけ聞け
ここが実践パートだ。席に着く前に、スタッフに次の5つを聞く。聞くのは失礼じゃない。聞かれて困る店のほうがおかしい。
- 基本のセット料金は、何分で、何が含まれるか
- サービス料の率と、税込みか税別か(計算の順番も)
- 指名や同伴、場内指名の制度があるか。あるなら金額は
- 従業員にドリンクを勧める仕組みがあるか。その料金は
- 延長するときは、事前に料金の確認があるか
風営法の第17条は、風俗営業者に対して、国家公安委員会規則で定める種類の料金を、営業所で客に見やすいように表示することを求めている。東京都には、指定区域内の一定の営業を対象に、料金や違約金を店内に見やすく表示することや、料金が実際より著しく安いと誤認させる表示を禁じること、粗野・乱暴な言動で料金を取り立てることを禁じる条例がある(対象の営業と区域は条例で確認が必要)。表示がない店、表示と請求が違う店は、これらの規定とは別に、そもそも信用しない方がいい。
予算の立て方。小計×1.43を頭に置け
最後に、予算の立て方だ。先の架空モデルで、サービス料30%・税10%・サービス料にも税がかかる計算なら、総額は小計の約1.43倍だった。この倍率は、店の率に置き換えて自分で計算し直せ。手順は3つだ。
- 店の料金表から、自分が使いそうな項目の小計を組む(セット+延長1回+指名+ドリンク数杯など)
- 小計に、店のサービス料と税の率をかけて総額を出す
- その総額に1割ほど余裕を足して、財布に入れる額と、カードの利用額の上限を決める
上限を決めたら、会計前の延長確認でも、ボトルを勧められたときでも、「予算はここまで」と言える。金額を決めずに入ると、その場の空気で決めることになる。
料金の支払いに関して、店に禁じられていること
料金の話の最後に、大事な条文を1つ。風営法の第22条の2は、接待飲食営業(1号営業)の営業者に対して、2つの行為を禁じている。1つは、客に注文や料金の支払いをさせる目的で、客を威迫して困惑させること。もう1つは、客に対して、威迫し、または誘惑して、料金の支払いのために、売春などの法令違反の行為をすること、対償を受けて不特定の相手に性交類似行為等をすること、風俗店で異性の客に接触する役務を提供する仕事に従事すること、アダルトビデオなどの性行為映像制作物に出演することなどにより金銭を得ることを要求すること、だ。罰則は第53条に定められている(e-Gov法令検索で確認)。
これは、料金が払えなくなった客に「払えないなら働け」「出演しろ」と迫る行為を、法律が禁じているということだ。もし、そういう要求を受けたら、一人で抱えずに相談してくれ。緊急なら110番、緊急でなければ警察相談専用電話の「#9110」。内閣府の案内では、AV出演契約についての相談は、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの全国共通番号「#8891」でもできる。男女を問わない。相談窓口の一覧は夜の街の相談先まとめ|金・暴力・薬物・依存・体調のトラブル別に窓口一覧にまとめた。
よくある質問
Q1. 「同伴」って何?
A. 来店前に待ち合わせて一緒に入店することを指す呼び方だ。同伴料の有無や金額は店による。法律で定まった言葉じゃないから、制度があるか聞くのが早い。
Q2. 「場内指名」と「本指名」の違いは?
A. 一般的には、来店中にその場で指名するのが場内指名、来店前から決めているのが本指名と呼ばれる。料金は店によって違い、同額の店もある。
Q3. 「税込み」と書いてあれば安心?
A. 税込みと書いてあっても、サービス料が別という店もある。表示の範囲(何が含まれているか)まで確認する。
Q4. 会計の内訳が納得できない。どうする?
A. その場で内訳(明細)を出してもらい、注文した覚えのない項目を具体的に指摘する。威圧されるなら110番。それ以外の相談は消費者ホットライン188が入口になる。詳しい動き方はぼったくりに遭わない夜の街の歩き方|その場の対処と公的な相談先にまとめた。
まとめ
最初の問いに答える。セット料金は、総額のごく一部にすぎない。総額は「小計×サービス料と税の倍率」で決まる。倍率は店ごとに違うから、座る前に聞け。
- 会計は、小計にサービス料と消費税が上乗せされる
- 架空モデルでは、基本セットの約1.4倍から約9倍まで総額が開いた
- サービス料の率と計算の順番は、必ず座る前に確認
- 料金表示は風俗営業者の義務(風営法第17条)
- 料金の支払いに関する威迫・誘惑は、接待飲食営業に禁じられている
今日やること
- スマホのメモに、質問リスト5つを保存しておく
- 財布に入れる額と、カードの上限を、行く前に決める
- 次に行く店の料金表を、事前に公式サイトで確認する
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夜の街の入口は夜の街ガイド、悩みから探すなら悩みから探す、初めての人ははじめての方へにある。
参考にした公的資料
- e-Gov法令検索「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122
- 東京都「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」 https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00002219.html
- 国税庁「消費税の税率」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6101.htm
- 国税庁「飲食店で徴しているサービス料等の事業区分」 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/20/12.htm
- 京都府「絶対に入ってはいけない!「ぼったくりバー」」(国民生活センターの注意喚起を掲載) https://www.pref.kyoto.jp/shohise/mrmg/h28/m481.html
- 内閣府男女共同参画局「性犯罪・性暴力被害者への支援」(#8891、AV出演被害防止・救済法) https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/ouen/safe/victim/
- 警察庁「ご意見、各種相談・情報提供等」(#9110) https://www.npa.go.jp/goiken_index.html
最終確認日:2026年10月
※この記事の計算例は、仕組みを説明するための架空モデルで、相場や特定の店の料金を示すものではない。税率や条例は変わることがあるので、最新の内容は公式ページで確認してくれ。この記事は法律相談の代わりにもならない。トラブルは警察、消費生活センター、法テラスに相談してほしい。
このテーマの全体像:水商売・夜の店入門と都市別・夜の歩き方ガイド
キャバクラ・バー・スナックの仕組みと料金・風営法・都市別の夜の歩き方。前後に読むならこのあたり。

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