※本記事は成分名の役割を一般的に整理したもので、成分の効果・効能をうたうものでも、診断や医療相談の代わりでもない。肌に合わないときは使用をやめ、皮膚科などに相談してほしい。内容は厚生労働省の通知、WHO・UNFPAの潤滑剤仕様、国内メーカーの公式表示にもとづく。最終確認日:2026年10月。
ボトルの裏の成分欄、ちゃんと読んだことあるか?
「水、ポリアクリル酸Na、カルボマー、フェノキシエタノール……」。呪文にしか見えねえよな。分からなくて当然だ。読んでる男のほうが少ない。ただ、読めると得することがある。自分の肌に合わなかったとき、原因の候補を絞れる。次に買うとき、同じ失敗を避けられる。
ちなみに、化粧品の世界では2001年4月から、配合した成分をすべて表示する「全成分表示」が始まっている(当時の厚生省の通知)。ローションがこのルールの対象かどうかは、商品の区分しだいだ。ただ、今回確認できた国内メーカーの公式サイトは、ローションでも「水、ポリアクリル酸Na、…」と成分を公開していた。読めるようになっておいて損はない。
もうひとつ、知らないと危ない落とし穴がある。水ベースのローションなのに、植物油が入っている商品がある。成分表を見ない人は、そこに気づけない。コンドームと併用するなら、これは見逃せない。
この記事は、成分名を「役割」ごとに並べた辞典だ。効果効能の話はしない。何の役で入っているか、それだけを整理した。
この記事で分かること
- 成分表の並び順のルールと、ローションに当てはめるときの注意
- 増粘剤・保湿剤・防腐剤など、成分名を「役割」で読み分ける辞典
- 国内メーカーの実際の成分表を読み解く3つの例
- 水ベースなのに油が入っているパターンの見つけ方
- 成分表に載らない指標(浸透圧・pH)の話
- 売り場で使える5項目のチェックリスト
成分表の並び順は「多い順」が基本だが、ローションでは目安にとどめろ
化粧品の全成分表示については、厚生労働省の通知(2001年3月)に具体的な決まりがある。成分名は日本語で書く。順番は、製品中の分量が多い順。ただし1%以下の成分と着色剤は、互いに順不同でよい。香料は「香料」とまとめて書いてよい。ごくわずかしか入っていない「キャリーオーバー成分」は、表示しなくてよい。
ここで大事な断りが2つある。ひとつ、この通知は化粧品の表示ルールだ。ローションの表示がこの順序に従っているかは、確認できなかった。ふたつ、同じ「水が最初に来る」でも、ボトルによって意味が違う可能性がある。だから、並び順は「多い順かもしれない目安」くらいに受け取っておけ。
それでも、読み方の基本は変わらない。先頭にあるのは、ほぼ間違いなく水だ。その次に、とろみをつける成分(増粘剤)、うるおいを保つ成分(保湿剤)、腐りにくくする成分(防腐剤)が並ぶ。ここまでが骨格だ。残りは香り、色、清涼感などの「味つけ」と考えればいい。
成分名の辞典|ほとんどは「5つの役割」のどれかだ
国内メーカーの公式サイトで公開されている成分と、メーカー自身の説明をもとに、よく出る成分を役割別にまとめた。英語名(INCI名)も並べたから、海外製品の表示を読むときにも使える。
| 役割 | 日本語の表示名 | 英語名(INCI) | メーカー説明・一般的な用途 |
|---|---|---|---|
| 増粘剤 (とろみをつける) | ポリアクリル酸Na | Sodium Polyacrylate | 水溶性の直鎖型。強い糸引き感と滑りが特徴、とメーカーが説明 |
| カルボマー | Carbomer | 水溶性の部分架橋型ポリアクリル酸。糸引きのないとろみをつける、とメーカーが説明 | |
| ヒドロキシエチルセルロース | Hydroxyethylcellulose | セルロース系の潤滑成分。高粘度タイプに使われている例がある | |
| キサンタンガム | Xanthan Gum | 植物由来の潤滑成分、とメーカーが説明 | |
| カルボマーNa | (Carbomer のナトリウム塩を指す表示) | 水溶性の架橋型。糸引きを抑えたタイプに使われる例がある | |
| 保湿剤・溶剤 (水分を保つ) | グリセリン | Glycerin | メーカーは「潤い成分」と説明。多く配合して、糸引きと粘度を抑えた商品がある |
| PG(プロピレングリコール) | Propylene Glycol | 多価アルコールの一種。グリコール類 | |
| 多価アルコール・ムコ多糖類 | (総称の表示) | 具体名を伏せた総称表示。大手メーカーの水潤滑ゼリーで使われている | |
| 防腐剤・キレート剤 (傷みにくくする) | フェノキシエタノール | Phenoxyethanol | 防腐剤として配合される |
| メチルパラベン | Methylparaben | 防腐剤として配合される | |
| ポリアミノプロピルビグアナイド、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル | Polyaminopropyl Biguanide / Iodopropynyl Butylcarbamate | 防腐のために配合される成分(大手メーカーの水潤滑ゼリーの成分表に記載) | |
| EDTA-2Na | Disodium EDTA | キレート剤(金属イオンの影響を抑える役) | |
| 乳化・可溶化 (混ざりにくいものを混ぜる) | PEG-40水添ヒマシ油 / PEO硬化ヒマシ油 | PEG-40 Hydrogenated Castor Oil | 香料などを水に溶かすために使われる |
| ポリソルベート20、オレイン酸ソルビタン | Polysorbate 20 / Sorbitan Oleate | 油分を水と混ぜる乳化の役 | |
| 味つけ・調整 | 香料 | Parfum / Fragrance | 「香料」とまとめて書いてよい決まり(厚労省通知) |
| 赤106などの着色料 | (色素) | 色をつける | |
| メントール、エタノール | Menthol / Alcohol | 清涼感を出すタイプで、成分表に並ぶ例がある | |
| pH調整剤 | (総称の表示) | 酸性〜アルカリ性の度合いを整える |
ここまで見て気づいたか。ローションのとろみは、増粘剤の組み合わせでほぼ決まる。同じ水ベースでも、直鎖型のポリアクリル酸Naを多めにすれば糸を引く。架橋型のカルボマーを使えば糸を引かない。セルロース系を混ぜれば、絡みつく粘りが出る。成分表を読むのは、使い心地を前もって想像する作業でもある。
実際の成分表を読んでみろ|国内メーカーの公式表示から3例
こんな場面を想像してくれ。ドラッグストアの棚の前で、ボトルの裏を撮影して、家で読み解く。やってみよう。以下は、国内メーカーが公式サイトで公開している成分表示だ(メーカー名と商品名は伏せ、出典は記事末尾にまとめた)。
| 例 | 成分表示(公式サイトより) | 読み解き |
|---|---|---|
| A. 中性の定番タイプ | 水、ポリアクリル酸Na、フェノキシエタノール、メチルパラベン | 増粘剤はポリアクリル酸Naのみ。糸引き感が強いタイプ。防腐剤が2種類。シンプルな骨格 |
| B. 糸引きを抑えたタイプ | 水、グリセリン、カルボマー、ポリアクリル酸Na、メチルパラベン | 架橋型のカルボマーと直鎖型を混ぜて、糸引きを調整している。保湿剤にグリセリン |
| C. 大手メーカーの水潤滑ゼリー | 水、ポリアクリル酸Na、カルボマー、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ポリアミノプロピルビグアナイド、多価アルコール、ムコ多糖類、PEO硬化ヒマシ油、pH調整剤 | 成分の99%が水と謳う処方。増粘剤2種、防腐成分2種、pH調整剤入り。香料・着色料なし |
3つとも、油の名前は出てこない。こういうラベルなら、水ベースと判断していい。次に、そうならないパターンを見ておく。
「水ベース」の看板でも、油が入っている商品がある|ここだけは見逃すな
ある国内メーカーの乳液タイプのローションは、成分表示がこうなっている。「水、ポリアクリル酸Na、カルボマー、プルケネチアボルビリス種子油(インカインチオイル)、サンショウモドキ種子エキス、オレイン酸ソルビタン、ポリソルベート20、EDTA-2Na、フェノキシエタノール、メチルパラベン」。
土台は水と増粘剤だ。ところが、植物油(種子油)が入っている。そして、油を水と混ぜるための乳化剤(オレイン酸ソルビタン、ポリソルベート20)が一緒に並んでいる。メーカー自身も「なめらかな乳液タイプ」と説明している。
油が少量だから問題ない、とは言えない。コンドームと併用できるかは、公式の表示では確認できなかった。厚生省(当時)の注意喚起は、「クリーム等の油性潤滑剤」を使わないことだった。判断がつかないなら、メーカーに併用の可否を問い合わせるか、油の名前が成分表に出てこない商品を選ぶのが安全側だ。
見分け方は簡単だ。成分表のなかに、次のような名前がないか探せ。
- 「〜油」「〜オイル」(例:種子油、ヒマシ油、ミネラルオイル)
- 「ワセリン」「パラフィン」
- 乳化剤(ポリソルベート、〜ソルビタン)が複数ある場合は、油を混ぜているサイン
注意してほしいのは、PEG-40水添ヒマシ油やPEO硬化ヒマシ油のように、名前に「油」が入っていても、香料などを水に溶かす役で使われる成分があることだ。名前だけで早合点せず、「役割は何か」を辞典で確かめろ。
防腐剤は「入っていて当たり前」だが、入っていなければ早く使い切れ
防腐剤と聞くと身構える男がいる。気持ちは分かる。ただ、水を主成分にした製品は、そのままだと微生物が増えやすい。だからWHOとUNFPAの調達仕様も、水性の潤滑剤には適切な防腐剤を入れること、防腐の効果が保存期間を通じて保たれていること、開封後に使い続けられる期間を表示することを求めている。
面白い例がある。あるメーカーの20リットルの業務用タイプは、「防腐剤・キレート剤は一切使用していません」と明記し、低コストを売りにしている。防腐剤ゼロは安全の証拠じゃなく、早く使い切る前提の設計だという読み方もできる。国内メーカーの表示も、未開封でも品質保証期間を過ぎたものは使わない、開封後はできるだけ早く使い切る、としている。
たとえば、半年前に開けて、棚の奥で眠っていたボトルを想像してくれ。色や匂いが変わっていなくても、開封後の期間が長いなら、使うのは見送ったほうがいい。これは、防腐剤の有無にかかわらず言えることだ。
防腐剤の個別の成分が気になる場合は、成分名をメモしておけ。肌に合わなかったときに、皮膚科で「この成分を使った」と伝えられる。これが、冒頭で言った「読めると得する」の中身だ。
成分表に載らない指標がある|浸透圧とpHの話
ここからは、成分表だけでは分からない話だ。WHOとUNFPAは、潤滑剤の安全性を検討する国際会議(2016年、バンコク)を開いた。きっかけは、研究で「使用者が膣や直腸の組織に刺激、灼熱感、損傷を起こすことがある」と示されたことだった。その結果、仕様には次のような基準が入っている。
| 指標 | WHO・UNFPA仕様の要件 | 成分表から分かるか |
|---|---|---|
| 浸透圧 | 水1kgあたり1200ミリオスモル(mOsm/kg)未満。グリコール類の含有量がおよそ8.3質量%を下回れば達成できる、と説明 | 分からない(配合量が非公開のため) |
| pH | 4.0〜7.0(許容誤差±1.0)。腟のpHは通常4.0前後 | 分からない(pH調整剤の量は載らない) |
| 防腐剤の有効性 | 薬局方の試験で効果を確認し、保存期間を通じて保たれること | 分からない(試験結果は非公開) |
| 皮膚への安全性 | 細胞毒性、皮膚感作性、皮膚刺激性の試験を実施すること | 分からない(試験結果は非公開) |
| 香料・着色料・ハーブ成分など | 含まないこと(リプロダクティブヘルス事業向けの調達仕様) | 分かる(成分表に出る) |
ここから分かることは2つある。ひとつ、成分表で確認できるのは安全性の一部にすぎない。ふたつ、市販のローションがこの仕様を満たしているかは、ボトルを見ても判断できない。だから成分表は「危ない要素を避けるための道具」であって、「安全の保証書」じゃない。そう割り切れ。
売り場で使える5項目チェックリスト|保存して使え
- 先頭は「水」か:水ベースの製品かを確認する
- 「〜油」「ワセリン」「パラフィン」がないか:あれば、コンドーム併用の可否をメーカーに確認する
- 乳化剤(ポリソルベート、〜ソルビタン)が並んでいないか:油を混ぜているサイン。2に戻る
- 香料・着色料・メントール・エタノールの有無:肌が敏感なら、ないものを選ぶ
- 防腐剤の有無と使い切り目安:なければ早めに使い切る前提で。ある場合も開封後は早めに
これを撮影してメモアプリに貼っておけば、次のボトルを買うたびに5分で判断できる。成分表を読んだうえで、あとは通販サイトの評価をのぞいてみるのも手だ。購入者の評価と件数だけでなく、商品ページの成分欄も見比べてくれ。
評価は人によって割れる。「評価が高い=自分に合う」とは限らない。
よくある質問
Q1. 成分が少ないほど安全なのか?
A. 一概には言えない。成分が少ないものは、防腐剤が入っていなくて早く傷む場合もある。成分の数ではなく、中身と使い切りの目安で判断する。
Q2. 「無添加」「パラベンフリー」と書いてあれば安心か?
A. 何を入れていないのかは、ボトルごとに違う。「無添加」の看板だけで判断せず、成分表で実際の中身を見る。別の防腐成分が入っていることもある。
Q3. 海外製品の成分表(英語)はどう読む?
A. 上の辞典のINCI名の列で読み替えられる。水は「Water」または「Aqua」、香料は「Parfum」や「Fragrance」と書かれる。
Q4. 成分表がないローションはどうする?
A. 避けるのが無難だ。成分を公開していないものは、肌に合わなかったときに原因を絞れない。
Q5. 肌に合わなかったとき、どうすればいい?
A. すぐ使用をやめて、洗い流す。国内メーカーも「お肌に合わないときは使用をやめ、専門医に相談」と案内している。ボトルの成分表を撮影して、皮膚科に持って行くと話が早い。
Q6. 食品添加物と同じ成分なら、口に入れても安全か?
A. 国内メーカーが「少量なら問題ない」と案内している製品もあるが、食品ではない。大量に飲まない、という注意もセットで書かれている。製品ごとの表示に従え。
まとめ|最初の問いに答える
冒頭の問いに戻る。ボトルの裏の成分欄、読めたか。いま読めたはずだ。難しい名前の並びは、増粘剤、保湿剤、防腐剤、乳化剤、味つけ。この5つに分けるだけで、見通しがつく。
- 成分表の順序は、化粧品では多い順が基本。ローションでは目安に留める
- とろみの正体は増粘剤の組み合わせ。糸引き・粘り・絡みはここで決まる
- 水ベースでも、油と乳化剤が入った商品がある。コンドーム併用は必ず確認する
- 防腐剤は水ベースでは必要。入っていない商品は早く使い切る
- 浸透圧やpHは成分表に載らない。成分表は安全の保証書ではない
- 合わなかったら使用をやめ、成分表を撮影して皮膚科へ
今日やること:①家のローションの成分表を撮影する。②「〜油」「ワセリン」「乳化剤」がないか、上のチェックリストで確認する。③合わなかった成分があれば、メモに残す。これだけで次の買い物が変わる。
次は、粘度の見方だ。同じ水ベースでも、数字の読み方を知っておくと、売り場の「ハード」「ライト」の意味が分かる。購入の入口はグッズ一覧にまとめてある。
参考にした公的資料・出典
- 厚生労働省医薬局審査管理課長・監視指導麻薬対策課長通知「化粧品の全成分表示の表示方法等について」(医薬審発第163号、2001年3月6日) https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/12877.pdf
- 厚生省医薬安全局長通知「化粧品規制緩和に係る薬事法施行規則の一部改正等について」(医薬発第990号、2000年9月29日) https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/files/k_yakuji/i-sinsa/cosmetics/tsuuchi/200009290929.pdf
- WHO Technical Report Series No.1067(2026) Annex 6「WHO/UNFPA specifications for personal lubricants」 https://cdn.who.int/media/docs/default-source/medicines/norms-and-standards/guidelines/trs-1067/trs-1067—annex-6.pdf
- 厚生省医薬安全局「医薬品・医療用具等安全性情報 No.152」(1999年2月) https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/safety-info/0087.html
- 中島化学産業「ペペ公式サイト(商品一覧・よくあるご質問・使い方)」 https://www.pepee.net/lineup.html 、 https://www.pepee.net/lineup3.html 、 https://www.pepee.net/faq.html
- 相模ゴム工業「よくあるご質問」 https://www.sagami-gomu.co.jp/contact/qa.html 、「99%水潤滑ゼリー」 https://www.sagami-gomu.co.jp/product/condom/99water.html
最終確認日:2026年10月。情報の扱い方は編集方針に、悩み別の入口は悩みから探すページにまとめてある。
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種類・成分・粘度・使い方・代用品の可否・後片付け。前後に読むならこのあたり。
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