夜の街のルールとマナー|どの業態でも共通する10の原則

手を上げてみろ。「夜の店のマナー」と聞いて、思い浮かぶのは「大声を出さない」「しつこくしない」くらいじゃないか?

それも大事だが、足りない。夜の街のマナーの中には、守らないと自分が法律の問題になるものがある。たとえば、酔っている相手にわいせつな行為をすれば、刑法第176条の不同意わいせつ罪の対象になりうる。条文には、同意しない意思を形成し、表明し、全うすることが困難な状態にさせ、またはその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の拘禁刑に処すると書かれている。その困難な状態の原因として、「アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること」が明記されている(e-Gov法令検索、2026年10月確認)。

つまり「酔っていたから」は言い訳にならない。むしろ、相手が酔っていることは、同意が成り立ちにくい状況として、条文に書かれている。この記事の10原則は、そういう「知らなかったでは済まない線」を、業態を問わず共通のルールとして整理したものだ。キャバクラ、バー、クラブ、風俗。どこへ行っても使える。

公的資料で確認できた条文と注意喚起だけで書いた。法律相談の代わりにはならない。個別のトラブルは警察や法テラスに相談してくれ。分かることは次の6つ。

  1. 業態を問わない10原則と、「やる/やらない」の一覧表
  2. お金・年齢確認・客引きのルール
  3. 撮影・接触・酔いのルール(刑法と撮影罪)
  4. 酒・移動のルール(一気飲みと酒気帯び運転)
  5. 連絡先・騒ぎ・困ったときのルール
  6. 業態別に追加で気をつける点と、絶対にやらないこと

先に要点だけ

  • 夜の街のルールの根っこは「同意」「お金」「年齢」「酒と移動」の4つ
  • 酔った相手への行為は、アルコールの影響が同意の困難さの事由として刑法に明記されている
  • ひそかな撮影は、性的姿態撮影等処罰法で3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
  • 飲酒後の自転車も酒気帯び運転の禁止の対象
  • 困ったら店のスタッフ、警察の#9110、緊急は110番
目次

10原則の全体像は、この一覧表で頭に入れろ

先に全体を見せる。左が「やる」、右が「やらない」だ。根拠は右端に書いた。条文や公的資料で確認できたものだけを載せている。

原則やるやらない根拠
1 年齢年齢確認に素直に応じる20歳未満の同伴者に酒を勧めない風営法第22条
2 お金入る前に総額を聞き、会計で内訳を見る料金表示のない店で注文しない風営法第17条、国民生活センター
3 客引き自分で調べて店を選ぶ客引きの案内についていかない風営法第22条、新宿警察署
4 撮影店のルールを確認するひそかな撮影、無断のSNS投稿性的姿態撮影等処罰法
5 接触相手の同意を確かめる同意のない接触刑法第176条
6 酔い自分の酔いを自覚する酔った相手に手を出す、酔いを言い訳にする刑法第176条第1項第3号
7 酒自分の適量を知る一気飲みや無理強い東京消防庁
8 移動飲んだら歩く・タクシー・電車酒を飲んだ運転、自転車、同乗道路交通法第65条
9 連絡先同意のうえで交換する断られた後の連続した連絡ストーカー規制法
10 騒ぎ小声で、周囲に配慮する大声、乱暴な言動風営法第13条・第15条

この一覧のどれか1つでも「知らなかった」があれば、その節を読んでくれ。ここからは、原則ごとに根拠と「たとえば」の場面を付ける。

お金・年齢・客引き。入口で決まるルール(原則1〜3)

最初の3つは、店に入る前後で決まる。

原則1は年齢だ。風営法の第22条第1項は、風俗営業を営む者に対して、営業所で20歳未満の者に酒類やたばこを提供することを禁じている。18歳未満の者に客の接待をさせることや、18歳未満を客として立ち入らせることも禁じられている。つまり、年齢確認を求められたら、それは店の義務を果たしているということだ。「面倒だ」と文句を言うな。同伴者が若く見えるなら、自分から身分証を出せ。

原則2はお金だ。風営法の第17条は、風俗営業者に対し、料金を営業所で客に見やすく表示するよう求めている。国民生活センターの注意喚起は、入店時に店内の料金表示をよく確認しない、会計時に想定と大きく違う金額を請求される、という流れを示している。詳しい動き方はぼったくりに遭わない夜の街の歩き方|その場の対処と公的な相談先にまとめた。要は、お金の話は入る前に終わらせることだ。

原則3は客引きだ。風営法第22条は、風俗営業を営む者の客引きと、客引きのための立ちふさがり・つきまといを禁じている。これは営業する側の禁止であって、客に課された義務じゃない。ただ、新宿警察署の注意喚起は、客引きに誘われてバーなどについて行くと高額請求などのトラブルのおそれがあるので、ついて行かないよう呼びかけている。たとえば、こんな場面を想像してくれ。連れが「ちょっと見るだけなら」と客引きの後をついて行こうとする。お前が止めろ。見るだけで終わらないのが、この種の誘いだ。

撮影・接触・酔い。同意のルール(原則4〜6)

ここが、いちばん重い。罰則が現実に絡む。

原則4は撮影だ。性的な姿態等の撮影に関する法律(性的姿態撮影等処罰法)の第2条は、正当な理由がないのに、ひそかに、人の性的な部位や下着、わいせつな行為などの姿態を撮影した者を、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処すると定めている。撮影した影像を提供した者にも罰則があり、不特定または多数の者に提供したり、公然と陳列したりすれば、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金などが定められている(第3条)。店の中も例外じゃない。店が撮影を禁止しているかどうかは店のルールだから、スマホを出す前に確認する。従業員や他の客が写り込む撮影は、本人の許可がなければしない。

原則5は接触だ。接待を伴う店では、手を握る、身体を密着させるといった接触が「接待」の行為として警察庁の基準に出てくる(解釈運用基準)。ただし、これは店の側の行為を整理したものだ。客が従業員に一方的に触っていい、という意味じゃない。同意のない接触は、刑法の問題になりうる。

原則6は酔いだ。最初に書いた通り、刑法第176条は、アルコールの影響で同意しない意思を形成し、表明し、全うすることが困難な状態にある人にわいせつな行為をすることを罰している。この条文には他にも、経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることも、同意を困難にする事由として挙がっている。自分が酔っていても、相手が酔っていても、「同意があったはず」は通らない場合がある。お前が酔っているときこそ、相手に手を出さない。

酒と移動。体を守るルール(原則7・8)

原則7は酒の量だ。東京消防庁の集計では、令和6年に急性アルコール中毒で救急搬送された人は管内で14,190人。男女とも20歳代が突出して多く、経験の浅さから適量が分からず飲みすぎることが背景にあると考えられている。同じページが挙げる注意は、自分の適量を知る、一気飲みをしない、お酒が飲めない体質の人は事前に伝える、飲酒を無理強いしない、酔った人に付き添い一人にしない、の5つだ。酒を勧めるときは、相手の様子を見ろ。

原則8は移動だ。道路交通法の第65条は、何人も酒気を帯びて車両等を運転してはならないとし、さらに、酒気を帯びている者に車両を提供すること、運転するおそれがある人に酒を提供したり飲酒を勧めたりすること、運転者が酒気を帯びていることを知りながら、その車に同乗することも禁じている(第65条第2〜4項)。罰則は第117条の2、第117条の2の2に定められている。自転車は車両等に入る。「車じゃないから」は通らない。

たとえば、こんな場面を想像してくれ。連れが「自転車で帰るから大丈夫」と鍵を出す。止めろ。止めないで酒を勧め続けた者も、条文の対象になりうる。帰りの足は、飲み始める前に決めておけ。具体的な帰り方は終電を逃した時の過ごし方|始発まで待つ7つの方法を費用と安全で比較で比較した。

連絡先・騒ぎ・相談。人との距離のルール(原則9・10)

原則9は連絡先だ。連絡先の交換は、お互いの同意があってこそ成り立つ。断られた後に連続して連絡するのは別だ。ストーカー行為等の規制等に関する法律の第2条は、特定の者への恋愛感情その他の好意の感情を充足する目的で、拒まれたにもかかわらず連続して電話をかけたり、文書を送ったり、電子メールを送ったりすることなどを「つきまとい等」として定義している。警察庁の資料では、SNSのメッセージも対象とされている。従業員が営業の連絡をしてくる場合と、客が従業員に一方的に連絡を続ける場合は、立場が違う。客の側が気をつけるのは、断られた連絡を重ねないことだ。

原則10は騒ぎと相談だ。風営法の第13条第3項は、風俗営業者に対し、深夜に営業を営む場合、客が大声や騒音を発したり、酒に酔って粗野・乱暴な言動をしたりして営業所の周辺で他人に迷惑を及ぼさないための措置を講じる義務を定めている。第15条は、営業所周辺の騒音・振動の規制を定める。店は、客の迷惑行為を防ぐ義務を負っているわけだ。客の側も、酔って大声を出す、乱暴な言動をする、というのは、店と周辺住民の双方に迷惑をかける。

困ったことがあったら、まず店のスタッフに伝える。それで解決しない、あるいは身の危険があるなら、警察だ。緊急は110番、緊急でない相談は警察相談専用電話の「#9110」。窓口の一覧は夜の街の相談先まとめ|金・暴力・薬物・依存・体調のトラブル別に窓口一覧にまとめた。

業態別に追加で気をつけること

10原則はどの業態でも共通だ。そのうえで、業態ごとに追加で意識したい点がある。ここは一般的な整理で、法律の話ではなく店のルールや状況の話が混じる。

業態追加で気をつけること根拠・補足
キャバクラ・ホストクラブ(接待を伴う風俗営業)指名・延長・ドリンクの料金を、その場の勢いで決めない。料金の支払いを理由に何かを要求されたら断る風営法第17条、第22条の2
バー・ガールズバー料金体系(席料、チャージ、ドリンク)を座る前に確認。従業員との距離感は相手に合わせる風営法の区分はキャバクラとガールズバーの違い|「接待」の有無で変わる許可・料金・時間
クラブ(ダンス・音楽中心)荷物と飲み物を手元から離さない。撮影ルールは店ごとに違う。騒音の苦情は周辺の問題になりうる風営法第15条
風俗(性風俗関連特殊営業)予約・料金・コースを事前に確認。店のルールを超えた要求はしない。法令違反の行為は求めない売春防止法第2条・第3条:対償を受けて不特定の相手と性交することは売春で、何人も売春の相手方となってはならない

風営法の許可・届出の区分をもっと詳しく知りたいなら風営法の許可と届出の違い|キャバクラ・バー・クラブ・風俗を1枚で整理を見てくれ。

絶対にやらないこと。ここだけは例外なしだ

  • 薬物に手を出さない。警視庁の盛り場向けのページは、大麻、覚醒剤、危険ドラッグが盛り場で秘密裏に売買されていると指摘し、一度手を出すと依存症になり健康を害する、と注意している。誘われても受け取らない
  • ひそかな撮影をしない。性的姿態撮影等処罰法で、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
  • 相手の同意がない行為をしない。刑法第176条・第177条の対象になりうる。第177条の不同意性交等は、5年以上の有期拘禁刑
  • 売春の相手方にならない。売春防止法第3条で、何人も売春の相手方となってはならないとされている
  • 酒を飲んで運転しない、させない。道路交通法第65条

この5つは、「マナー」ではなく「法律」の線だ。守れないなら、夜の街に出るな。

よくある質問

Q1. 店内の写真をSNSに上げるのはダメ?
A. 店のルールによる。性的な姿態の撮影や、ひそかな撮影は法律の問題になる。従業員や他の客が写る場合は、本人の許可を取る。撮影を禁止している店では、スマホを出さない。

Q2. 連絡先を聞くのはマナー違反?
A. 相手が応じるなら問題ない。断られたら引く。連続した連絡は、状況によってはストーカー規制法の問題になる。

Q3. 酔った連れが他の客に絡まれた。どうする?
A. 一人で対処せず、店のスタッフに伝える。身の危険があれば110番。

Q4. 性風俗の店で、店のルールを超えた要求をしたら?
A. 店とのトラブルになる。法令違反の行為を求めることは、売春防止法の観点でも許されない。要求せず、店の案内に従う。

Q5. 「友達だから大丈夫」と、酔った友達にキスした。これは?
A. 同意の有無が問題になる。酔っていて同意が確認できない状態なら、トラブルになりうる。確認できなければ、しない。

まとめ

最初の問いに答える。夜の街のマナーは「大声を出さない」では足りない。同意、お金、年齢、酒と移動。この4つが、業態を問わない根っこだ。

  • 年齢確認とお金の確認は、店と自分を守る手続き
  • 撮影と接触は、同意と店のルールが前提。酔いは言い訳にならない
  • 飲んだら運転しない、させない。自転車も
  • 連絡先は同意のうえ。断られたら引く
  • 困ったらスタッフ、警察(#9110、緊急は110番)

今日やること

  • このページの10原則の表をスクショして、保存する
  • 次に飲みに行く前に、帰りの足を決めておく
  • 連絡先の扱いと撮影のルールを、一緒に行く人と軽く共有しておく

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夜の街の入口は夜の街ガイド、法律や歴史の雑学は夜の勉強会、初めての人ははじめての方へにある。

参考にした公的資料

最終確認日:2026年10月

※この記事は公的資料をもとにした一般的な情報の整理で、法律相談の代わりにはならない。個別の事案が違反にあたるかの判断は、警察や弁護士、法テラスなどの窓口に相談してほしい。条文は改正されることがあるので、最新の内容は各公式ページで確認してくれ。

ここから先は、こっちだ

ルールを守れば、夜の街は楽しめる。ただ、守っていても揉めることはある。悩んだときの入口と、街の全体像は次のページにある。

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