ナンパは違法?声かけで問われる条例・刑法・ストーカー規制法の線引き

※本記事は法律の一般的な情報整理であり、法律相談や個別の事件の見通しの代わりにはならない。条文はe-Gov法令検索と、警察・自治体の公開資料で確認した。条例は都道府県ごとに違い、改正も多い。最終確認日:2026年10月。迷ったときは警察や法テラス、弁護士に相談しとけ。

正直に答えろ。街で見かけた相手に声をかけようとして、「これ、捕まったりしねえよな?」と頭をよぎったことはねえか。

先に結論を言う。「ナンパ」という名前の罪はねえ。声をかけた、それだけを直接罰する一般的な条文も、俺がe-Govと条例で確認した範囲では見つからなかった。ただし、それで安心する奴が一番危ねえ。声をかけた「その先」に、条例、軽犯罪法、ストーカー規制法、刑法、そして施設のルールが並んでいるからだ。

数字を見せる。警察庁の資料では、令和6年(2024年)のストーカー事案の相談等は全国で19,567件。そのうち、被害者と加害者の関係が「面識なし」とされたものが1,722件(8.8%)あった。ストーカー規制法違反の検挙は1,341件で、前年より260件増えている。知らない相手との間で起きた件が、毎年千件台あるってことだ。

損をするのは罰金や前科だけじゃねえ。断られたあとの「もう1通」が、軽い気持ちのまま警告や禁止命令に変わることもある。線の位置を知らずに動くのが、いちばん高くつく。

この記事で分かることは次の6つだ。

  1. 声かけが問題になる「3つの層」(行為のルール、刑法、場所のルール)
  2. 迷惑防止条例の中身。県ごとの違いと、罰則の実例
  3. 軽犯罪法とストーカー規制法で、どこからアウト側に入るのか
  4. 刑法が出てくる境目(触る、脅す、判断力が落ちた相手、立ち入り)
  5. 店・駅・ビルの管理権と、客引き・スカウトの規制
  6. 保存用の早見表と、困ったときの相談先

この記事の要点

  • 「ナンパ罪」はない。声かけだけを直接処罰する一般的な条文は、確認できた範囲では見当たらない
  • 分かれ目は「相手が離れようとしたあと」。進路をふさぐ、つきまとう、断られた後に連絡を重ねる、は別の規制に入る
  • 迷惑防止条例は県ごとに違う。同じ行為でも罰則の重さが変わる
  • 触る、脅す、判断力が落ちた相手に性的な行為を進める、は刑法の領域で、罰則が一気に重くなる
  • 店や施設の「出ていけ」に従わないと、声かけとは別の罪になりうる

「ナンパ」という罪名はない。でも声かけの先に、3つの層が待っている

順番に整理する。ナンパで問題になる法律は、大きく3つの層に分けると頭に入りやすい。

層主な根拠引っかかりうる行為罰則の目安(条文)
1 行為のルール(軽犯罪法)軽犯罪法1条28号他人の進路に立ちふさがる、身辺に群がって立ち退こうとしない、不安や迷惑を覚えさせる仕方でつきまとう拘留又は科料
1 行為のルール(条例)各都道府県の迷惑防止条例卑わいな言動、つきまとい・嫌がらせの反復、不当な金品要求、客引きなど(県ごとに違う)和歌山県の例:6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金など
1 行為のルール(ストーカー規制法)ストーカー規制法2条・3条・18条好意の感情を満たす目的での、つきまとい、待ち伏せ、進路に立ちふさがる、面会・交際の要求、拒まれたのに連続して連絡ストーカー行為をすると、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
2 刑法刑法176条・177条・208条・222条・223条など同意しない意思を表せない状態に乗じたわいせつ行為、暴行、脅迫、強要176条:6月以上10年以下の拘禁刑。177条:5年以上の有期拘禁刑
3 場所のルール刑法130条・234条など施設管理者の退去要求に応じない、業務を妨害する130条:3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金

刑法の罰則は、2025年6月1日の改正施行で「懲役」が「拘禁刑」に変わっている。e-Gov上の現行条文は拘禁刑の表記だ。

ここからは、層ごとに「どこで線を越えるか」を見ていく。ただ、一番ややこしいのは最初の層、つまり「声をかけたあと相手が離れようとした場面」だ。そこから行くぞ。

分かれ目は声かけそのものじゃなく、「相手が離れようとしたあと」だ

軽犯罪法1条28号は、「他人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者」を、拘留又は科料の対象にしている。重い罪じゃない。だが、警察が最初に動く「入口」としてよく出てくる条文だ。

想像してくれ。駅前で声をかけたら、相手が「急いでるので」と歩き出した。ここで横に並んで歩きながら話を続ける。進行方向に回り込む。ここが分かれ目になる。声をかけた時点では何も起きていなかったのが、相手の進路をふさいだ瞬間に、条文の文言に近づく。

条文に「何メートル」「何回まで」という基準は書かれていない。判断されるのは、相手が不安や迷惑を覚える仕方だったかどうかだ。だから、自分では軽い声かけのつもりでも、相手がどう受け取るかで話が変わる。

ここまでは、まだ「その場」の話だ。本当に厄介なのは、連絡先を交換できた後や、また会いたくなった後に出てくる、次の層だ。

迷惑防止条例は県ごとに違う。和歌山県と東京都の条文を読んでみる

迷惑防止条例の正式名称は、たとえば東京都も和歌山県も「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」だ。ただ、名称も中身も都道府県ごとに違う。ここでは、条文を確認できた和歌山県の例を表にする。

条禁止される行為(要約)罰則(同条例18条)
第4条 卑わいな行為の禁止公共の場所や公共の乗物で、他人を著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせる方法で、身体に触れる、のぞき見る、撮影する、「卑わいな言動」をする6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(18条3項)。撮影などはより重い規定が別にある
第5条 不当な金品の要求公共の場所で、立ちふさがる、つきまとう、言いがかりをつけるなど迷惑をかける方法で金品を要求する50万円以下の罰金又は拘留・科料(18条4項)
第8条 不当な客引き公共の場所で、性的好奇心をそそる行為の客引き、接待を伴う飲食の客引き、身体や衣服を捕らえるなど執ような勧誘50万円以下の罰金又は拘留・科料(18条4項)
第11条 嫌がらせ行為嫌悪や嫉妬などの感情を満たす目的で、つきまとい、待ち伏せ、面会要求、拒まれたのに連続した連絡などを反復し、著しい不安を覚えさせる1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(18条1項)

第11条は、ストーカー規制法が対象にする感情(好意、好意が満たされなかった怨恨)を除いて、嫌悪や嫉妬などの感情を対象にしている。つまり「好意があるかないか」で、適用される法律が分かれる作りだ。

東京都はどうか。警視庁の説明では、東京都の迷惑防止条例は、妬みや恨みなど悪意の感情に基づくつきまとい行為等を、5条の2で禁止している。対象は、正当な理由なく、専ら悪意の感情を満たす目的で、つきまとい、無言電話、拒まれたのに繰り返すメッセージ、性的羞恥心を害する言葉などを反復することだ。また、7条3項に基づく公安委員会告示(告示第181号)で、指定区域の公共の場所で、客引きやスカウトを目的に人目につく形で相手を待つ行為が規制されている。

ナンパそのものは客引きやスカウトとは別物だ。ただ、店の勧誘が混ざった瞬間に、条例の対象に入る。自分が住む県や、出かける街の条例を一度読んでおけ。「県名+公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」で例規集が出てくる。

好意があるほど危ねえ。ストーカー規制法は「恋愛感情」が入口になる

ストーカー規制法の「つきまとい等」は、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情を充足する目的で行う行為だ。条文(2条1項)には、次のような行為が並んでいる。

  • つきまとい、待ち伏せ、進路に立ちふさがり、住居や勤務先の近くでの見張り、押し掛け、みだりにうろつくこと(1号)
  • 面会、交際、その他の義務のないことを要求すること(3号)
  • 著しく粗野又は乱暴な言動(4号)
  • 拒まれたにもかかわらず、連続して電話をかけ、文書を送り、電子メールの送信等をすること(5号)

「電子メールの送信等」には、DMなど、受信者を特定して情報を伝える電気通信が含まれる(2条2項)。つまりLINEやSNSのメッセージも対象になる。相手の承諾なくGPS機器などで位置情報を取得する行為(位置情報無承諾取得等)も規制の対象で、紛失防止タグを使った取得を加える改正も令和7年に行われている(2025年12月30日施行とされる)。

想像してみろ。連絡先を交換できた。翌日に1通送ったが、返信がない。夜にもう1通。既読がついたのに返ってこない。3通目、4通目……。条文が見ているのは「拒まれたにもかかわらず、連続して」という部分だ。何通からアウトという基準は書かれていない。ただ、返信しない、ブロックされたといった反応は、「拒まれた」と評価される材料になりうる。別のアカウントから送るのは、さらに悪質になるだけだ。

行政の対応と刑事罰が並んで用意されている。公安委員会は、更に反復するおそれがあると認めるとき、禁止命令を出せる(5条)。つきまとい等を反復する「ストーカー行為」をすれば1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(18条)。禁止命令に違反してストーカー行為をすれば2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金(19条)だ。

警察庁の令和6年の資料で、どの行為が多いのかを見ておく。複数に当てはまる件は、それぞれに数えた延べ件数だ。

条文の号行為令和6年の件数(延べ)
1号つきまとい・待ち伏せ・見張り等10,476件
3号面会・交際の要求6,186件
4号著しく粗野又は乱暴な言動2,709件
5号無言電話・連続した電話・メール等4,189件
8号性的羞恥心を害する行為1,078件

同じ資料では、警告が1,479件、禁止命令等が2,415件(法施行後最多)、ストーカー規制法違反の検挙が1,341件(うちストーカー行為罪1,108件、禁止命令等違反233件)となっている。禁止命令のほうが警告より多いのは、警告を前置しなくても出せる仕組みになっているからだ。

触る、脅す、判断力が落ちた相手に進める。ここから先は刑法の世界だ

刑法が出てくると、罰則は一気に重くなる。ナンパの文脈で特に知っておくべきなのは、2023年の改正で整理された不同意わいせつ(176条)と不同意性交等(177条)だ。

条文は、暴行や脅迫を用いること、アルコールや薬物の影響があること、睡眠など意識が明瞭でない状態、予想と異なる事態に直面して恐怖や驚愕していることなどの事由によって、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」にさせ、又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者を処罰する、という構造になっている。刑は、不同意わいせつが6月以上10年以下の拘禁刑、不同意性交等が5年以上の有期拘禁刑だ。

ここで大事なのは、見られているのが「相手の状態」だということだ。「向こうも乗り気に見えた」は、条文の判断軸じゃねえ。酒が入って判断力が落ちている相手を相手に、性的な話を先へ進めることが、どれだけ危ういか分かるだろう。16歳未満の者に対する行為は、13歳以上の相手には5歳以上年長の者に限るという形で、別に規定されている(176条3項、177条3項)。年齢が分からない相手とは、そもそも性的な話へ進まないのが鉄則だ。

それ以前の段階でも、嫌がる相手の腕をつかんで引き止める、体で進路をふさぐ、といった行為は、状況によって暴行(208条)や強要(223条)に問われうる。「殺すぞ」「ばらすぞ」のような言葉は脅迫(222条)だ。

警察庁の資料には、ストーカー事案に関連して検挙された刑法犯等の内訳(令和6年)も出ている。住居侵入378件、脅迫187件、暴行122件、不同意わいせつ107件、不同意性交等63件、迷惑防止条例違反101件、軽犯罪法違反42件だ。声かけから始まった話が、こうした罪名に進むことがある、という現実の数字だ。

店・駅・ビルには管理権がある。「出て行け」と言われたら終わりだ

3つ目の層は場所のルールだ。人の看守する建造物などに正当な理由なく入る、又は退去の要求を受けたのに退去しなかった者は、3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金(刑法130条)。駅の構内や商業施設の敷地などが、これにあたるかは場所や状況による。ただ、警備員や店員から「ここでの声かけはやめてください」「出てください」と言われて居座れば、声かけとは別の問題になる。

さらに、威力を用いて人の業務を妨害すれば威力業務妨害(234条、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)が問題になりうる。店の前に居座って客に声をかけ続ける、といったケースだ。

客引きは別の規制がある。風営法22条は、風俗営業を営む者に、客引きや、客引きのために人の身辺に立ちふさがり、つきまとうことを禁止している。ナンパしていたつもりが、通りがかりに店の勧誘と見られる場面もあるから、態度で誤解されないようにしろ。

保存用|この場面、どっちに転ぶかの早見表

ここまでの話を、場面別の「Aなら→B」にまとめた。スクショして持っておけ。ナンパの手引きじゃねえ。線を越えないための早見表だ。

場面引っかかりやすい法令取るべき行動
声をかけたが、相手が足を止めず先へ進んだ軽犯罪法1条28号、県条例そこで終わりにする。追いかけない、並んで歩かない、前に回り込まない
断られた。同じ場所で別の日にまた会った軽犯罪法、ストーカー規制法2条1項1号・3号声をかけ直さない。条文に「何日空ければ」の基準はない
連絡先を交換したが、返信がないストーカー規制法2条1項5号追撃の連絡をしない。返信がないこと自体が答えだ
既読無視やブロックをされた同上(拒まれたにもかかわらず連続して)別アカウントや知人経由で接触しない
相手の体に触れる、腕をつかむ刑法208条、県条例の卑わいな行為触れない。引き止めない
酒で判断力が落ちている相手刑法176条・177条(アルコールの影響)性的な話を先へ進めない。関わらないほうが安全だ
店員や警備員に注意された刑法130条後段、234条従って離れる。言い返さない
自宅や職場の近くで待つストーカー規制法2条1項1号論外。やらない

警察から連絡が来た、トラブルになった。そのときの動き方

自分が相手から「やめてくれ」と言われた、あるいは警察から連絡が来た。そんなときは、まず接触を止めろ。連絡を重ねて説明しようとするのは、いちばんやっちゃいけない動きだ。

相談先は次のとおり。警察への相談は、警察相談専用電話の「#9110」が使える。緊急のときは110番だ。法的な見通しは、法テラス(サポートダイヤル0570-078374、平日9〜21時・土曜9〜17時)や弁護士に聞け。相手の立場で被害に遭ったときも、相談先は同じだ。

よくある質問

Q. 声をかけただけで逮捕されることはあるのか?

A. 声かけ自体を処罰する一般的な条文は、確認できた範囲では見当たらない。ただし、逮捕するかどうかは個別の事案ごとの判断だ。進路をふさぐ、つきまとう、断られた後に連絡を重ねる、といった行為が加わると、軽犯罪法、条例、ストーカー規制法の問題になりうる。

Q. 目的が「友達になりたい」だけなら、ストーカー規制法は関係ないのか?

A. ストーカー規制法が対象にするのは、恋愛感情その他の好意の感情を満たす目的の行為だ。好意の範囲に入るかは個別の事案で決まる。仮に入らなくても、悪意の感情を対象にする東京都の条例(5条の2)や、和歌山県の第11条のような条例が別にある。相手が嫌がる接触を続ければ、どこかの規制に引っかかる前提で考えろ。

Q. SNSのDMで知らない人にメッセージを送るのは違法か?

A. 1通送っただけで直ちに違法とする条文は確認できなかった。ただ、ストーカー規制法の2条2項は、電子メールの送信等にSNSのメッセージも含みうる書き方になっている。拒まれたにもかかわらず連続して送ると、5号に当たりうる。

Q. 相手が「嫌じゃない」と言ったら、触れても大丈夫か?

A. 同意の有無は、その場の状況と相手の状態で判断される。酒の影響で判断力が落ちている状態や、断りにくい立場を利用した場合は、同意があったと言えないことがある。確信がないなら触れるな。

Q. 条例の条文はどこで確認できる?

A. 各都道府県の例規集で読める。名称は都道府県ごとに違う。「県名+迷惑防止条例」で検索し、条文と最新の改正日を確認してくれ。条例は改正が多く、この記事の条文引用も、確認した時点のものだ。

まとめ|「捕まるのか?」への答え

最初の問いに戻る。声をかけただけで捕まるのか。確認できた範囲では、声かけだけを処罰する一般的な条文は見つからなかった。だが、それで話は終わらない。相手が離れようとしたあとに何をするかで、軽犯罪法、条例、ストーカー規制法、刑法と、線が何本も出てくる。

  • 「ナンパ罪」はない。ただし声かけの先に、行為のルール・刑法・場所のルールの3層がある
  • 分かれ目は、相手が離れようとしたあと。進路をふさぐ、つきまとう、連絡を重ねるは別の規制に入る
  • 迷惑防止条例は県ごとに違う。和歌山県の第11条や東京都の5条の2のように、反復行為を禁じる条文もある
  • 好意があるほど、ストーカー規制法の入口に近づく。拒まれたら連絡は止めろ
  • 触る、脅す、判断力が落ちた相手に進める、は刑法の領域で、罰則が一気に重くなる
  • 店や施設の退去要求には従え

今日やることは2つ。1つ目は、スマホで、返信がないまま追撃している連絡が残っていないか確認し、あれば止めること。2つ目は、住んでいる県の迷惑防止条例を一度、例規集で読んでおくことだ。

参考にした公的資料

最終確認日:2026年10月

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