※法律の一般的な情報を整理した記事だ。金額や結論を断定するものじゃなく、法律相談の代わりにもならねえ。請求したい・請求されたという場合は、弁護士や法テラス(法テラス・サポートダイヤル 0570-078374)に相談してくれ。最終確認日:2026年10月。情報の扱い方は編集方針に書いてある。
不倫の慰謝料って、結局いくらなんだ。ネットで調べると「100万円から300万円」とか「50万円から150万円」とか、サイトごとに数字が違って、余計に分からなくなる。そんな状態でここに来たんじゃないか。
先に、いちばん大事なことを言う。法テラス(国が設立した公的な法人)のよくある質問では、不貞の相手に対する慰謝料にも、離婚に伴う慰謝料にも、「形式的にいくら」という目安や相場があるわけではない、と説明されている。つまり、全国共通の定価表は存在しねえ。
民間の法律事務所の解説には「相場」が載っている。ただ、その数字も事務所ごとにズレている。たとえば離婚しない場合の目安は、ある事務所は100万円から200万円程度(高くても100万円程度になることが多い)と書き、別の事務所は50万円から150万円程度と書いている。同じ「相場」でも、見ている景色が違う。
これを知らないまま動くと、損をする。ネットで見た高い数字を信じて請求して話がこじれる。あるいは、請求された側が相場より高い額を言われるままに飲んでしまう。どっちも、金額を決める「要素」を知らないから起こる。
この記事で分かることは、この6つだ。
- 慰謝料に「公的な固定額」がない理由と、法律上の根拠
- 「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」の違い
- 金額を左右する要素を、増額・減額の方向で並べた表
- 民間の「相場」がどこまで当てになるか
- 請求の期限(時効)と、手続きの流れ
- 相談前に整理しておく事実のチェックリスト
この記事の要点
- 慰謝料の根拠は民法709条・710条。公的に決まった固定額や相場表はない
- 「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」は別の請求で、誰に請求できるかも違う
- 婚姻期間、不貞の期間・回数、子の有無、離婚に至ったか、発覚後の対応などが金額に響くとされる
- 「相場」は民間の目安で、事務所ごとに幅が違う。あくまで参考にとどめる
- 請求には期限がある。民法724条の3年を意識する
公的な「定価」はない。金額は事情ごとに決まる
問い:不倫の慰謝料は、法律で金額が決まっているのか。
答えは決まっていない、だ。根拠になるのは民法の二つの条文で、709条は「故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者は、損害を賠償する責任を負う」という原則を定め、710条は、財産以外の損害(精神的な苦痛)についても賠償しなければならないとしている。裁判所の案内でも、慰謝料は、相手方の不法行為によって受けた精神的苦痛を慰謝するための損害賠償だと説明されている。
精神的苦痛は、目に見えねえ。だから、一律の金額を条文に書くことができねえ。結果として、裁判所が個別の事情を総合して決めることになる。法テラスのよくある質問でも、離婚に伴う慰謝料は、婚姻期間、婚姻が破綻した原因とそれがどちらにあるか、相手方の財産額などの様々な要素を勘案して個別に決まる、と案内されている。
つまり「相場はいくらだ」という問いは、実は「どの要素がどの方向に働くか」という問いに言い換えたほうが、役に立つ。
請求の種類は2つ。誰に何を請求するかで中身が違う
問い:「慰謝料」と言っても、何についての慰謝料なのか。
2026年6月の最高裁判決の補足意見は、不貞行為の相手に対する請求を、次の2つに区別して整理している。この2つは、請求の中身が違う別のものだ。
| 種類 | 何を理由にする請求か | 主な請求先 | 押さえておくこと |
|---|---|---|---|
| 不貞慰謝料 | 不貞行為そのもの(婚姻共同生活の平和の維持に係る権利利益の侵害) | 配偶者、不貞の相手(連帯して請求できるとされる) | 相手が既婚と知っていた、または注意すれば知れた場合が前提(法テラスの案内) |
| 離婚慰謝料 | 不貞などの有責行為で離婚をやむなくされたこと | 主に配偶者 | 不貞の相手には、離婚させる意図で不当に干渉したなどの特段の事情がない限り、原則請求できない(最高裁 平成31年2月19日判決) |
ここは混同しやすいので、噛み砕く。不貞の相手に請求するとき、通常は「不貞慰謝料」のほうを考える。離婚に至った場合でも、離婚した責任まで不貞の相手に問うのは、最高裁がハードルを高く置いている。その一方で、配偶者に対しては、その有責行為によって離婚をやむなくされたことを理由に、損害の賠償を求められると判決文は述べている。
なお、民法719条は、複数人が共同の不法行為で他人に損害を与えたときは、各自が連帯して賠償する責任を負うと定めている。法テラスが「配偶者と不貞の相手に連帯して請求できる」と案内している背景には、この考え方がある。連帯だからといって、一つの損害について二重に全額を受け取れる仕組みではない、と考えられる。細かい調整は、弁護士に確認してくれ。
金額を左右する要素は、増額と減額の両方向で見る
ここが、この記事の本題だ。保存用の一覧表を置く。
先に断っておく。この表は「裁判所の公式な基準表」じゃねえ。公的資料(法テラス、最高裁判決)と、法律事務所の解説に共通して出てくる要素を、増える方向・減る方向に整理した見取り図だ。どれがどれだけ効くかは、事案と裁判官で変わる。
| 要素 | 増額の方向に働きうる | 減額の方向に働きうる | 確認できた根拠 |
|---|---|---|---|
| 婚姻期間 | 長い | 短い | 法テラス(離婚慰謝料の考慮要素)、法律事務所の解説 |
| 子ども | 未成年の子・幼い子がいる | 未成年の子がいない | 法律事務所の解説 |
| 不貞の期間・回数 | 期間が長い、頻度が多い、発覚後も続いた | 短い、軽微 | 法律事務所の解説 |
| 夫婦関係が壊れた原因 | 不貞が主な原因で壊れた | 不貞以外にも夫婦関係の問題があった。不貞時にすでに破綻していた | 法テラス、最高裁 平成8年判決(令和8年判決の補足意見で整理) |
| 離婚に至ったか | 離婚した、または別居などで関係が破綻 | 離婚せず、同居を続けている | 法律事務所の解説(金額への影響が大きいとする) |
| 被害の程度 | 心身の不調が生じた、不貞相手との間に子ができた | 被害が小さい | 法律事務所の解説 |
| 不貞の態様・悪質性 | 虚偽の言い訳、離婚をけしかけた | 相手が独身と偽っていた | 法律事務所の解説 |
| 発覚後の対応 | 謝罪がない、態度が不誠実 | 謝罪している | 法律事務所の解説 |
| 請求される側の認識 | 既婚と知っていた | 既婚と知らず、知れる事情もなかった。破綻していたと信じ、相当の理由があった | 法テラス、最高裁 令和8年判決 |
| 支払う側の収入・資産 | (慰謝料の本来の考慮要素ではないとする解説もある) | 支払い能力の問題として、事実上減額されることがあるとされる | 法律事務所の解説 |
表の読み方のコツは二つある。ひとつは、一つの要素だけで金額が決まらないことだ。婚姻期間が長くても、すでに夫婦関係が壊れていたなら減る方向に働く。逆に婚姻期間が短くても、悪質性が高ければ増える方向に働く。要素は掛け算で効く。
もうひとつは、最後の行の注意だ。「相手は高収入だから高額が取れるだろう」と考える人がいるが、法律事務所の解説では、収入そのものは慰謝料の本来の考慮要素ではないとされている。収入に引きずられた期待は、危ねえ。
こんな場面を想像してくれ。結婚3年、子どもなし、不貞は数回で、発覚後すぐに謝罪して別居もせず同居を続けている。逆に、結婚15年、未成年の子が2人、不貞が数年続き、発覚後も続いて離婚に至った。同じ「不倫」でも、要素の並びが全然違う。この並びが、金額の違いにつながる。
民間の「相場」は、どこまで当てになるのか
問い:結局、相場は信じていいのか。
結論:参考にはなる。ただし、鵜呑みにしちゃいけねえ。理由を表で見てくれ。
| 出典(民間の法律事務所の解説) | 離婚する(した)場合 | 離婚しない場合 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 弁護士法人デイライト法律事務所(更新日 2026年9月24日) | 100万円〜300万円程度 | 100万円〜200万円程度(高くても100万円程度となることが多いとされる) | 別居に至り関係が破綻したといえる場合は、離婚する場合と同程度になる傾向とされる |
| 弁護士法人立川法律事務所 | 100万円〜200万円程度(200万円超は多くない) | 50万円〜150万円程度 | 裁判官ごとの「自分の相場」が影響することもある、地方では高めの判断もあると注意している |
見比べると、離婚する場合の上限も、離婚しない場合の幅も、事務所によって違うのが分かるはずだ。これは、どちらかが間違っているという話じゃなく、「相場」自体が、各事務所が経験や判決の傾向から出した見立てにすぎないことを示している。しかも、どちらも公的機関が出した数字じゃねえ。
だから、相場の使い方はこうだ。「自分のケースの要素を並べたとき、上の表のどのあたりに近いか」を探る手がかりにはする。ただし、請求額や受け入れる額を決める根拠にはしない。最終的な見通しは、事実関係を全部知った弁護士に聞くのが確実だ。
なお、公的な統計で「不貞慰謝料の認容額の平均」を示したものは、今回確認した範囲では見つからなかった。この記事に金額の平均値を載せていないのは、そのためだ。
期限は3年。いつ知ったかが分かれ目になる
問い:請求にタイムリミットはあるのか。
ある。民法724条により、不法行為による損害賠償の請求権は、被害者が損害と加害者を知った時から3年、または不法行為の時から20年で時効により消滅する。法テラスの案内では、不貞などの不法行為ごとの慰謝料は、不法行為があったことを知った時から3年以内であれば請求できる。離婚に伴う慰謝料は、離婚から3年で時効にかかる、と整理されている。
「知った時」がいつかは、実際に争いになりやすい論点だ。メッセージを見つけた日なのか、相手を特定できた日なのか。ここは事実の経緯で決まる。早めに日付を整理して、相談に持ち込むのがいい。
話し合いで決まらなければ、裁判所の手続を使う
手続の入口は、まず当事者同士の話し合い(示談)だ。話し合いで決まらない、または話し合いができない場合、離婚後であれば、家庭裁判所の慰謝料請求調停を使える。裁判所の案内では、申立人は離婚した元夫または元妻で、申立てには収入印紙1200円分と連絡用の郵便切手が必要とされている。離婚前なら、夫婦関係調整調停(離婚)の中で慰謝料について話し合える、とも案内されている。調停は、双方から事情を聴き、解決案の提示や助言が行われる手続だ。調停で決まらなければ、さらに裁判という道もある。
ここで、請求された側の話もしておく。内容証明などで請求書が届いたとき、やっちゃいけないのは無視だ。期限の欄と請求の内容を確認して、早めに相談に行け。そして、何の請求か分からない、差出人が不明、支払い期限が極端に短いといった書面は、慌てて振り込む前に、消費者ホットライン「188」や弁護士に確認しろ。身に覚えのない請求に、焦って払ってしまうのが一番まずい。
相談前に整理しておく事実のチェックリスト
最後に、保存用のチェックリストを置く。弁護士や法テラスに相談する前に、これを埋めておくと、相談の30分がかなり濃くなる。法テラスの無料法律相談は1回30分、同じ問題で3回までだ。収入と資産の条件があるので、予約の時に確認してくれ。
| 項目 | メモしておくこと | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 婚姻期間 | 結婚した年、同居・別居の時期 | 考慮要素の中心のひとつ |
| 子ども | 人数、年齢 | 増額・減額の両方に関わる |
| 不貞の期間・回数 | 分かる範囲で(推測と事実を分ける) | 悪質性の判断に関わる |
| いつ知ったか | 発覚した日、きっかけ | 3年の期限の計算に直結 |
| 夫婦関係の状況 | 不貞の前から不仲だったか、別居していたか | すでに破綻していたかの判断に関わる |
| 離婚の予定 | 離婚する・しない、話し合いの状況 | 離婚慰謝料の話に進むかどうか |
| 相手の認識 | 不貞の相手は既婚だと知っていたか | 不貞慰謝料の前提に関わる |
| 発覚後のやり取り | 謝罪の有無、関係の解消、連絡の続き | 減額・増額の判断材料 |
| 希望 | 金額、関係の整理、再発防止など | 何を目標に動くかを決める |
よくある質問
Q1. 不倫の慰謝料の相場はいくら?
公的な固定額や相場表はない。法テラスも、形式的な目安はないと案内している。民間の解説では、離婚しない場合で50万円から200万円程度、離婚する場合で100万円から300万円程度の幅が示されているが、事務所ごとに差がある。あくまで参考だ。
Q2. 離婚しなくても慰謝料は請求できる?
できる。不貞慰謝料は、不貞行為そのものを理由にする請求なので、離婚の有無とは別に成立しうる。ただし、離婚しない場合は金額が低くなりやすいとされる。
Q3. 不倫相手だけに請求してもいい?
配偶者と不貞の相手には連帯して請求できると、法テラスは案内している。どちらにどう請求するかは、事情を踏まえて判断することだから、弁護士に確認してくれ。
Q4. 相手の収入が高ければ、高額になる?
法律事務所の解説では、収入そのものは慰謝料の本来の考慮要素ではないとされている。支払い能力の問題で事実上減額されることはあるが、高収入だから高額、という単純な関係じゃねえ。
Q5. 既婚者だと知らずに関係を持った場合は?
法テラスの案内では、請求できるのは、既婚者だと知っていた場合、または注意すれば知ることができた場合とされている。知らず、知ることもできなかったといえる事情があるかが争点になる。個別の事情は弁護士に確認してくれ。
まとめ|金額の前に「要素」を並べろ
冒頭の問いに戻る。不倫の慰謝料はいくらか。公的な定価はなく、答えは「要素の並び次第」だ。民間の相場は参考にはなるが、事務所ごとに幅が違うのは、さっき表で見た通りだ。
- 根拠は民法709条・710条。公的な固定額はない
- 不貞慰謝料と離婚慰謝料は別の請求で、不貞の相手への離婚慰謝料は原則請求できない
- 婚姻期間、不貞の期間・回数、子の有無、離婚に至ったか、発覚後の対応などが金額に響く
- 民間の相場は事務所ごとに違う。自分のケースの要素を並べて、弁護士に聞くのが確実
- 請求には3年の期限がある。「いつ知ったか」を整理しておく
今日やること。上のチェックリストのうち、埋められる項目だけでいいから、メモアプリに書き出せ。推測と事実は分けて書く。そのうえで、法テラスの予約を入れるか、弁護士会の相談窓口を探せ。金額の話は、そこからだ。
参考にした公的資料
- 民法(e-Gov法令検索)
- 最高裁判所 平成31年2月19日判決(平成29年(受)第1456号)裁判例検索
- 最高裁判所 令和8年6月5日判決(令和7年(受)第933号)裁判例検索
- 裁判所 慰謝料請求調停
- 法テラス「配偶者の不貞相手に対する慰謝料の金額の目安はありますか。」
- 法テラス「離婚に伴う慰謝料の目安はありますか?」
- 法テラス「離婚後に、離婚した元配偶者に対して財産分与や慰謝料を請求することができますか?」
- 法テラス「配偶者の不貞相手に、慰謝料を請求することができますか。」
- 消費者庁 消費者ホットライン188
- 法テラス 無料法律相談に関するよくあるご質問
- 弁護士法人デイライト法律事務所 不倫慰謝料の相場(民間の解説)
- 弁護士法人立川法律事務所 不倫(不貞行為)慰謝料の相場(民間の解説)
最終確認日:2026年10月
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このテーマの全体像:浮気・不倫の法律ガイド
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