※法律の一般的な情報を整理した記事だ。法律相談の代わりにはならねえ。「やってはいけないこと」を知るための記事で、証拠の集め方を教えるものじゃない。具体的な対応は弁護士や法テラス(法テラス・サポートダイヤル 0570-078374)に相談してくれ。最終確認日:2026年10月。情報の扱い方は編集方針に書いてある。
パートナーが怪しい。何か隠している気がする。「証拠さえあれば、問い詰められる」。夜中にそう考えて、スマホに手が伸びそうになった経験が、お前にもあるんじゃねえか。
その気持ちは、おかしくねえ。疑いを抱えたまま暮らすのは、毎日が削られる。ただ、先に一つだけ言わせてくれ。そこで手を伸ばした先に、法律の落とし穴がいくつも口を開けている。
数字から行く。警察庁によれば、令和7年(2025年)の不正アクセス禁止法違反の検挙は431件・248人。他人のID・パスワードを無断で入力する「識別符号窃用型」が、不正アクセス行為の検挙の9割以上を占める。罰則は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金だ。この統計は、配偶者や恋人の事案だけを数えたものじゃない。ただ、条文の側には「夫婦なら例外」とは書かれていない。
知らないと何を失うか。証拠は手に入っても、自分が罪に問われたり、損害賠償を求められたり、肝心の話し合いで立場が逆転したりする。浮気を問い詰めるつもりが、「お前こそ違法行為をした」と返される。これほど割に合わない話はねえ。
この記事で分かることは、この6つだ。
- 他人のアカウントに入る行為が、夫婦でも問題になる理由
- GPS・位置情報アプリ・紛失防止タグを巡る、ストーカー規制法の規制
- 他人の家・部屋に入る行為や、郵便物の開封を巡る刑法の条文
- 証拠を突きつけた後の「暴露」「脅し」が違法になる場面
- 違法な行為を一覧にした早見表
- 探偵に頼む場合の注意点と、まず取るべき行動
この記事の要点
- 他人のID・パスワードで勝手にログインする行為は、不正アクセス禁止法の対象になりうる。罰則は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
- 承諾なくGPSを取り付けたり、位置情報を取得したりする行為は、ストーカー規制法の規制対象になりうる。令和7年12月30日からは紛失防止タグも加わった
- 他人の家や部屋に正当な理由なく入れば、住居侵入罪の問題になりうる
- 証拠を突きつけて職場やSNSで暴露する、金を払わなければばらすと脅す行為も、別の法律に触れうる
- 証拠集めの前に、弁護士や法テラスに相談するのが一番安全だ
疑う気持ちは自然でも、手段を間違えると自分が加害者になる
問い:証拠を集めること自体が悪いのか。
答え:違う。証拠を集めること自体が悪いんじゃねえ。問題は「どうやって集めるか」だ。法律事務所の解説でも、違法な手段で集めた証拠は採用されない可能性があり、犯罪になるおそれもあると注意されている。つまり、違法な手段には二重のリスクがある。ひとつは、証拠として使えなくなるかもしれないこと(採用されるかどうかは裁判所の判断で、俺には断定できねえ)。もうひとつは、集めた行為そのものが、罪や損害賠償の話になることだ。証拠として使えたとしても、集めた行為の責任が消えるわけじゃねえ。
こんな場面を想像してくれ。妻(夫)の様子が最近おかしい。ある夜、本人が寝ている間に、スマホを手に取った。ロックを外して中を開き、メッセージのやり取りを写真に撮った。翌朝、それを突きつける。相手は最初は黙るが、数日後に「勝手に見たよね」と言い返してくる。話し合いの主導権は、ここで入れ替わる。
この場面で何が問題になりうるかを、次の節から条文で見ていく。繰り返すが、これは「やるな」の一覧であって、手順書じゃねえ。
他人のアカウントへの無断ログインは、夫婦でも不正アクセスになりうる
問い:パートナーのSNSやメールに、勝手に入ったら何の罪になるのか。
結論から言う。不正アクセス禁止法の対象になりうる。条文を見てくれ。同法3条は「何人も、不正アクセス行為をしてはならない」と定め、2条4項1号は、アクセス制御機能のあるコンピュータに、電気通信回線を通じて他人の識別符号(ID・パスワード等)を入力し、制限されている利用ができる状態にする行為を、不正アクセス行為としている。例外として括弧書きで除かれているのは、アクセス管理者本人がする場合と、管理者または識別符号の利用権者の承諾を得てする場合だ。条文上、「配偶者だから」という例外は見当たらねえ。罰則は、11条により3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金だ。
総務省の解説でも、他人のID・パスワードを入力して、利用権限がないのに制限された機能を使える状態にすることが、不正アクセス行為の例とされている。SNS、メール、クラウド、ネットバンクなど、識別符号で守られたサービスが典型だ。
警察庁の統計では、令和7年の検挙431件・248人のうち、手口別では識別符号窃用型が399件で90%以上を占める。ここに配偶者の事案がどれだけ含まれているかは、公表資料からは分からなかった。
ひとつ、線引きで悩ましい点を正直に書いておく。スマホ本体のロックを解除して、端末の中の画面を見る行為は、ネットワーク越しのログインとは性質が違う。それがどの罪に当たるのか、当たらないのかは、今回確認できた資料では断定できなかった。ただし、犯罪にならなかったとしても、プライバシーの侵害として、民事で責任を問われる可能性は残る。「罪にならないはず」と自己判断して動くのは、危ねえ。
また、「パスワードを前に教えてもらったことがある」という場合も、どこまでが承諾の範囲かは、個別の事情で判断が分かれうる。ここも弁護士に確認する領域だ。
GPS・位置情報・紛失防止タグは、ストーカー規制法の規制対象になった
問い:相手の車やバッグにGPSを付けるのは、問題ないのか。
問題がある。ストーカー規制法は、令和3年(2021年)の改正で、GPS機器等を使った位置情報の無承諾取得等を規制対象に加えた(警察庁の資料によると施行は令和3年8月26日)。改正の背景として、警察庁は、元交際相手等の車にGPS機器をひそかに取り付けて位置情報を取得する事案が出ていたこと、令和2年7月の最高裁判決がそれを従来の「見張り」には当たらないとしたことを挙げている。
条文の内容はこうだ。2条3項は、「位置情報無承諾取得等」として、①承諾なく、相手が所持する位置情報記録・送信装置の位置情報を取得すること、②承諾なく、相手の所持する物に位置情報記録・送信装置等を取り付けること、などを挙げている。警察庁の解説では、例として、相手の車にGPS機器を無断で取り付ける、相手のスマートフォンに無断でインストールした位置情報アプリを使って位置情報を取得する、といった行為が示されている。
さらに、令和7年12月30日からは、紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得等も規制対象に追加された。警察庁によると、元交際相手等の車などに紛失防止タグをひそかに取り付ける事案が背景にある。
罰則は、ストーカー行為(つきまとい等または位置情報無承諾取得等を反復してすること)をした場合に1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(18条)。禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(19条)だ。
注意点も正確に書く。この法律は、「恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」であることが要件として条文に書かれている。浮気を疑う配偶者の行為がこの要件に当たるかは、個別の事情で判断される話で、俺には断定できねえ。ただ、「夫婦だから対象外」とは条文のどこにも書かれていない。この線のギリギリを試すのは、割に合わない賭けだ。
他人の家・部屋に入る、手紙を開ける。刑法の条文が待っている
問い:不貞の相手の家や、ホテルの部屋などに入るのは?
刑法130条は、正当な理由がないのに、人の住居や人の看守する邸宅・建造物に侵入した者を、3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金としている。不貞の相手の自宅、アパートの部屋、他人が管理する建物の中に、無断で入り込む行為は、住居侵入の問題になりうる。法律事務所の解説でも、他人の家に盗聴器を設置する行為は住居侵入罪に問われる可能性があると例示されている。
同じく刑法133条は、正当な理由がないのに、封をしてある信書(手紙)を開けた者を、1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金とする。不貞の相手宛ての封書を勝手に開ける、といった行為は避けるべきだ。
配偶者と同居する自宅のような場所について、どこまでが「正当な理由」にあたるかは、事案ごとに変わりうる。ただ、少なくとも、「不貞の相手の管理する場所」に踏み込めば、自分が加害者になる。
突きつけた後も危ない。暴露と脅しは別の罪になる
問い:証拠が手に入った後、どう動くかでも問題になるのか。
なる。ここは意外と見落とされる。
- 職場やSNSでの暴露:刑法230条の名誉毀損は、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損した場合に、その事実の有無にかかわらず成立しうる。条文は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。「事実なんだから問題ねえだろ」は、通用しないことがある
- 脅し:「払わなければ職場にばらす」と害を加える旨を告げれば、刑法222条の脅迫(2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)が問題になりうる。それで金品を交付させれば、249条の恐喝(10年以下の拘禁刑)の話になる
たとえば、不貞の相手に「会社に言うぞ。示談金を今週中に振り込め」と送った場面。気持ちは分かる。だが、慰謝料の請求は法的な手続で行うのが本筋だ。感情任せの一通が、請求する側を加害者に変えちまう。
違法になりうる行為の早見表
保存用の表を置く。条文と罰則は、e-Gov法令検索で確認できた範囲だ。個別の成否は、事実関係と専門家の判断による。
| 行為 | 関わる法律 | 条文・罰則(確認できた範囲) | ひとこと |
|---|---|---|---|
| 他人のIDとパスワードで、SNS・メール・クラウド等にログインする | 不正アクセス禁止法 | 3条・2条4項1号。11条で3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | 「配偶者は例外」という条文はない。承諾の範囲は個別判断 |
| 承諾なく車・持ち物にGPS機器を取り付ける、位置情報を取得する | ストーカー規制法 | 2条3項。ストーカー行為として18条(1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)、禁止命令違反は19条(2年以下または200万円以下) | 令和3年8月26日に規制開始。恋愛感情等の目的要件が条文にある |
| 承諾なく紛失防止タグを取り付ける、位置を取得する | ストーカー規制法 | 令和7年12月30日から規制対象に追加(警察庁) | 同上 |
| 相手のスマホに位置情報アプリを無断で入れて位置を取る | ストーカー規制法 | 警察庁の解説に例として掲載 | 同上 |
| 不貞の相手の自宅・部屋などに無断で入る | 刑法(住居侵入等) | 130条。3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金 | 盗聴機器の設置も同様の問題になりうるとの解説がある |
| 封をしてある他人宛ての手紙を開ける | 刑法(信書開封) | 133条。1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金 | 正当な理由がない場合 |
| 職場・SNS・知人に不貞を言いふらす | 刑法(名誉毀損)、民法709条・710条 | 230条。3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。事実の有無にかかわらず成立しうる | 民事で慰謝料を求められることもある |
| 「ばらす」と告げて金を払わせようとする | 刑法(脅迫・恐喝) | 222条(2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)、249条(10年以下の拘禁刑) | 請求は法的手続で行う |
この表に載っていない行為でも、問題になるものはある。迷った時点で、止まれ。
探偵に頼んでも、違法行為が許されるわけじゃない
問い:自分でやらず、探偵業者に任せれば安全か。
探偵業は、探偵業の業務の適正化に関する法律により、営業所ごとに都道府県公安委員会へ届出が必要な業種だ(4条)。同法6条は、探偵業者は、この法律によって他の法令で禁止・制限されている行為ができるようになるわけではないことに留意し、人の生活の平穏を害するなど個人の権利利益を侵害しないようにしなければならない、と定めている。つまり、探偵業の届出があるからといって、違法行為が許されるわけじゃねえ。契約前には、探偵業者が書面を交付して重要事項(業者の名称、届出をした公安委員会、業務内容、対価の概算額など)を説明する義務もある(8条)。
契約の場面で確認しておきたい点は、次の通りだ。
- 契約前に、業者から書面で重要事項の説明を受けたか(8条)
- 料金の概算額、調査の内容、解約したときの扱いが、書面で確認できるか
- 届出をした公安委員会の名称を、自分で確認できるか
探偵業者とのトラブルになったら、お住まいの自治体の消費生活センターに相談できる。全国共通の消費者ホットライン「188」に電話すれば、最寄りの窓口を案内してもらえる(消費者庁の案内による)。
まずやることは、証拠集めじゃなく「相談」だ
問い:じゃあ、何から始めればいいのか。
- 法テラスや弁護士の相談を予約する(法テラスの無料法律相談は、収入・資産の条件を満たす人が対象で、1回30分、同じ問題で3回まで)
- 相談で「何を目標にしているか」(離婚、慰謝料、関係の修復、別れさせるなど)を伝える
- 自分が普通に受け取っている連絡や、自分の家計の記録など、すでに手元にあって正当に持っているものは、消さずに残しておく
- それ以外の情報を集める方法は、独断で動かず、弁護士に確認してから決める
手元にあるものを残す、というのは一般論だ。どの資料が使えるかは、弁護士が判断する。自分で結論を出すな。
よくある質問
Q1. パートナーのスマホを見るだけで犯罪になる?
一概には言えねえ。ネットワーク越しにID・パスワードを入力してログインすれば、不正アクセス禁止法の問題になりうる。端末のロックを解いて画面を見る行為が、どの罪になるかは、今回確認した資料では断定できなかった。ただし、罪にならなくても、プライバシー侵害で責任を問われる可能性はある。やる前に弁護士に聞け。
Q2. 夫婦なら、GPSをつけても問題ない?
ストーカー規制法には、「夫婦なら対象外」という条文はない。一方で、同法の要件には、恋愛感情等の目的があり、成立するかは個別の事情で判断される。リスクがある行為なので、独断でやるのは避けるべきだ。
Q3. パスワードを教えてもらっていたら、見てもいい?
承諾の範囲は、どんな目的で、どこまでを認めていたかによる。普段の便利さのために共有していたパスワードで、不貞の調査のために入ってよい、という承諾まで含むかは別の話だ。個別の判断になる。
Q4. 探偵に頼めば、違法な方法でも許される?
許されない。探偵業法6条は、探偵業者は、この法律により他の法令で禁止されている行為ができるようになるわけではないことに留意するよう求めている。
Q5. 逆に、自分が勝手にスマホを見られた・GPSをつけられたら?
見覚えのない機器やアプリを見つけても、慌てて消す前に、状況を記録して、警察の相談窓口か弁護士に相談しろ。ストーカー規制法の規制対象になりうる行為だ。なお、相手が違法なことをしたからといって、自分の不貞が消えるわけじゃねえ。それぞれ別に、責任を問われうる。
まとめ|証拠より先に、止まる勇気を持て
冒頭の問いに戻る。証拠さえあれば、問い詰められる。たしかにそうだ。ただ、その証拠の取り方を間違えると、問い詰める側に回るはずの自分が、問い詰められる側になる。疑うのも、真実を知りたいのも、人として自然な気持ちだ。だからこそ、手を伸ばす前に、一度止まれ。
- 他人のID・パスワードでのログインは、不正アクセス禁止法の対象になりうる。罰則は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
- GPS・位置情報アプリ・紛失防止タグの無承諾の利用は、ストーカー規制法の規制対象になりうる
- 他人の家・部屋に入る、手紙を開ける、暴露する、脅すといった行為は、刑法の別の条文に触れうる
- 探偵業者に頼んでも、違法行為が許されるわけじゃない。契約トラブルにも注意する
- まず弁護士か法テラスに相談する。独断で証拠を集めない
今日やること。相手のスマホに手を伸ばす代わりに、法テラスか弁護士の相談予約を入れろ。そして、今の気持ちと「何を求めているのか」を、メモに書き出しておけ。相談の30分が、それだけで変わる。
参考にした公的資料
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律(e-Gov法令検索)
- ストーカー行為等の規制等に関する法律(e-Gov法令検索)
- 刑法(e-Gov法令検索)
- 探偵業の業務の適正化に関する法律(e-Gov法令検索)
- 警察庁 不正アクセス行為の発生状況及びアクセス制御機能に関する技術の研究開発の状況(令和8年3月12日公表)
- 総務省 不正アクセス禁止法の概要
- 警察庁 ストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律(概要)令和3年
- 警察庁 ストーカー規制法の規制対象行為(令和7年改正反映)
- 警察庁 ストーカー規制法が改正されました(紛失防止タグ、令和7年12月30日施行)
- 消費者庁 消費者ホットライン188
- 法テラス 無料法律相談に関するよくあるご質問
- 弁護士法人リット法律事務所 解説コラム(違法な手段で集めた証拠。民間の解説)
最終確認日:2026年10月
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