※妊娠中の体と性生活について、公開されている医療・自治体の資料に沿って整理した一般的な記事だ。診断や個別の医療アドバイスの代わりにはならねえ。妊婦ごとに状況が違うので、可否は必ず担当の産婦人科の医師に確認してくれ。最終確認日:2026年10月。情報の扱い方は編集方針に書いてある。
正直に答えてくれ。妻が妊娠して、「これって、していいのか?」と一度も考えなかった男はいねえだろう。聞きにくいし、検索はしにくい。そして、間違った情報を信じて、あとで後悔するのが一番まずい。
先に、確認できた範囲の結論を言う。今回、日本産科婦人科学会などの公的な一般向け資料で、「妊娠◯週から◯週ならOK」と一律に決めた記述は見つけられなかった。分かったのは、経過に問題がなければ医師が禁止するとは限らない一方で、前置胎盤、切迫流産・切迫早産、破水、出血があるときは、控えるべき場合があるということだ。たとえば、MSDマニュアル(家庭版)は前置胎盤について、性行為が出血のきっかけになることがあるため医師は控えるよう勧める、と書いている。
夫が間違えやすいのは、「安定期だから大丈夫」と自己判断することだ。この記事で分かることは、この6つだ。
- 資料から言える「時期別」の整理表
- 医師に止められやすいケース(前置胎盤・切迫流産・切迫早産・破水)
- 行為の途中・後に出たら中止するサイン
- 避妊具を使う理由と、妊娠中の感染症の数字
- 夫が気をつけるチェックリスト
- 夫の性欲との付き合い方
この記事の要点
- 「安定期ならOK」と一律には言えない。可否は、その妊婦の経過と医師の指示で決まる
- 前置胎盤では、性行為が出血のきっかけになりうるため、医師は控えるよう勧める(MSDマニュアル)
- 出血、お腹の張りが続く、破水の疑いがあるときは、中止して病院に連絡する
- 妊娠中の性感染症は、胎児や出産に影響しうる。避妊具を使い、心当たりがあれば夫も検査を受ける
- 主治医から安静や禁止を指示されたら、それが最優先だ
時期別に見る|資料から言えること、言えないこと
問い:妊娠の時期によって、どう違うのか。
答え:資料は、週数でOK・NGを決めるのではなく、症状と診断名で整理している。切迫流産と切迫早産の定義の週数だけは、豊中市の資料に書かれていた。
| 時期 | 資料で確認できること | 気をつける症状 |
|---|---|---|
| 妊娠22週未満 | 切迫流産(流産しかかっている状態)の時期。性生活は、張り止めの内服中や症状があれば禁止とされる(切迫流産・早産と言われた妊婦向けの注意) | どんな少量でも赤〜褐色の出血、下腹部痛、お腹が硬く張る感じ |
| 妊娠22週〜37週未満 | 切迫早産(早産しかかっている状態)の時期。安静と治療で妊娠を続けられる状態だが、早く生まれるほど赤ちゃんは未熟 | 出血、お腹の張り、破水(温かいものが流れる、下着がびっしょり) |
| 第2〜第3期に出血が始まったとき | MSDマニュアルは、この時期の性器出血では、医師が前置胎盤を疑って評価するとしている | 突然の、痛みを伴わない出血 |
| 37週以降 | 今回確認できた資料には、性生活についての記載がなかった | —(担当医に確認) |
「妊娠初期はだめ」「安定期はいい」「後期は控える」といった、よく聞く線引きも、今回確認できた公的資料では裏づけが取れなかった。だから、この記事ではそういう線引きは書かねえ。担当医が「問題ない」と言うなら、それが唯一の根拠だ。
医師に止められやすいケース|4つの診断名を覚えておけ
| ケース | どういう状態か | 資料にある性生活の扱い |
|---|---|---|
| 前置胎盤 | 胎盤が子宮の下部にあり、子宮頸部の出口を覆っている。痛みのない突然の出血が出ることがある。分娩800件に1件程度 | 性行為は出血のきっかけになりうるため、医師は控えるよう勧める(MSDマニュアル) |
| 切迫流産(22週未満) | 流産しかかっている状態 | 張り止めの内服中や症状があれば禁止(豊中市の資料) |
| 切迫早産(22〜37週未満) | 37週より前の陣痛など、早産しかかっている状態 | 同上。安静の度合いは、医師に確認する |
| 破水・性器感染症などがある場合 | 前期破水、性器の感染症は、切迫早産の危険因子とされる(MSDマニュアル) | この場合に何を禁止するかは個別。必ず医師の指示に従う |
なお、MSDマニュアルが挙げる切迫早産の危険因子は、前期破水、過去の早産、一部の性感染症を含む性器の感染症、子宮頸管無力症、多胎妊娠、胎盤・子宮・胎児の異常だ。これらに当てはまる妊婦かどうかは、夫には分からねえ。だから、「うちは大丈夫」と決めつけずに、妻と一緒に妊婦健診で聞くのが筋だ。
中止するサイン|途中でも、終わったあとでも
たとえば、こんな場面を想像してくれ。妊娠中期で、医師にも特に問題と言われていない夫婦が、久しぶりに触れ合ったとする。そのあとで、妻が「お腹が張る」と言い出した。ここで「ちょっと休めば治る」と流すか、記録して様子を見るか。分かれ道は、症状の強さと続き方だ。
豊中市の資料は、切迫流産・切迫早産の症状と、受診の目安を次のように示している。
| 症状 | 資料の書き方 | やること |
|---|---|---|
| 出血 | 赤色〜褐色で、どんな少量でも異常(切迫流産)。切迫早産では、おりものに混じることもある。健診の内診後の少量の出血で、続かなければ様子をみる | 病院に連絡し、診察を受ける |
| お腹の張り・痛み | 後期は多少張ることがあるが、横になって安静にすれば、すぐ治まるなら心配ない。1時間に2〜3回続く、または安静にしても治まらなければ異常と判断 | 中止して横になる。治まらなければ病院に連絡 |
| 破水 | チョロチョロと温かいものが流れる感じ、下着がびっしょりになることもある | すぐ病院に連絡 |
行為の最中に、これらの症状が出たら、そこで中止する。そのあと、本人が安静にして、必要なら病院に連絡する。「せっかくだから最後まで」は、一番やっちゃいけねえ判断だ。
避妊具を使う理由|妊娠中の感染症の数字を見ろ
豊中市の資料は、症状がなければ「避妊具を用いて負担のかからない体位で」と書いている。妊娠しているのに避妊具、と思うかもしれねえが、ここでの目的は避妊じゃなく、感染予防だ。
日本産婦人科医会が2017年に公表した資料(調査協力:性の健康医学財団)によると、妊婦健診の基本項目に、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV、性器クラミジア感染症、風疹、B群溶血性レンサ球菌、HTLV-1などが入っている。性感染症の一部は、胎児や新生児に影響する。梅毒は妊娠中に胎盤を通じて胎児に感染し、胎児死亡や先天梅毒を起こしうる。性器クラミジア感染症は、産道感染で新生児の結膜炎や肺炎などを起こしうる。
| 妊婦の年齢 | 性器クラミジアの陽性率(PCR法による抗原検査) |
|---|---|
| 19歳以下 | 15.9% |
| 20〜24歳 | 7.5% |
| 25〜29歳 | 2.3% |
| 30〜34歳 | 1.2% |
| 35〜39歳 | 0.8% |
| 40歳以上 | 1.0% |
| 全体 | 2.3% |
この表は、全国の分娩取扱施設の調査(2013年10月〜2014年3月の検査状況)によるもので、少し古い数字だ。梅毒については、2015年10月〜2016年3月に分娩となった妊婦の全国調査で、感染率は4,022人に1人(76人)だった。2024年の厚生労働省の報告では、梅毒の国内報告数14,829人のうち女性が5,324人で、この10年あまりで大きく増えている(平成24年は女性183人)。
つまり、妊婦のパートナーである夫の側にも、検査を受ける意味がある。夫が妻以外と性的な接触をした心当たりがあるなら、妊娠中こそ、隠さずに検査を受けてくれ。保健所は、梅毒などの性感染症の検査を匿名・無料で受けられる(厚生労働省)。検査の場所と窓口の選び方は、性感染症の検査の記事に整理してある。
夫のチェックリスト|誘う前に確認すること
- 妊婦健診で、性生活について医師に確認したか(夫が聞きづらければ、妻に聞いてもらう)
- 前置胎盤・切迫流産・切迫早産・破水などの診断や指示が出ていないか
- 最近、出血・お腹の張りがないか
- 避妊具を用意したか
- 妻の体調と気持ちを、先に聞いたか(つわり、疲れ、不安)
- 途中でもやめる合図を決めたか
- 自分に、感染症の心当たりはないか
たとえば、チェックの一つでも「分からない」なら、その夜は見送る。それが妻と子どもを守る、一番確実な判断だ。
夫の性欲との付き合い方|我慢でも、押しつけでもない
妊娠中は、妻の側に事情が多い。体調、つわり、不安、お腹の大きさ。そのとき夫が「欲しいのに応じてもらえない」と感じても、責めるのは筋違いだ。避けたいのは、不機嫌な態度で圧をかけることと、外で済ませることだ。外で済ませれば、上の感染症の数字が、妻と赤ちゃんのリスクにつながりうる。
選択肢は、会話と、性的でない触れ合いと、自分で処理することだ。自分で処理する場合の考え方は、セルフプレジャーのカテゴリにまとめてある。産後の再開については、産後のセックスの記事を先に読んでおくといい。
よくある質問
Q1. 安定期なら、してもいいのか。
「安定期だから大丈夫」と決めつけられる公的な線引きは、今回確認できなかった。経過に問題がなければ、医師が止めない場合もあるが、前置胎盤や切迫早産などがあると、控えるよう勧められる。担当医に聞くのが確実だ。
Q2. 行為のあとに少し出血した。どうすればいい。
出血は、どんな少量でも気をつける症状とされている。量や続き方を観察して、病院に連絡し、指示を仰ぐ。健診の内診後の少量の出血で、続かなければ様子を見るという記載もあるが、自己判断はしねえ。
Q3. つわりがひどくて応じられないと言われた。
体の事情を最優先にする。責めずに、触れ合いや会話に切り替える。つわりの時期は個人差が大きい。
Q4. 妊娠中に、パートナーの性感染症が心配になった。
パートナーも妊婦も、心配ならまず検査を受ける。保健所の匿名・無料検査や、産婦人科で相談できる。妊婦健診でも梅毒やクラミジアなどの検査が行われている。
まとめ|答えは「医師の指示」と「中止の勇気」だ
冒頭の問いに戻る。妊娠中のセックスは、「どこまでOK」を週数で決められる話じゃねえ。経過と医師の指示が基準で、出血・張り・破水があれば中止する。避妊具は感染予防のために使う。
- 週数で一律にOK/NGと決めた公的資料は確認できなかった。医師の指示が最優先
- 前置胎盤、切迫流産・切迫早産、破水があるときは、控えるよう勧められる
- 出血、1時間に2〜3回続く張り、破水の疑いは中止して病院に連絡
- 避妊具は感染予防のために使う。夫も心当たりがあれば検査を
- 不機嫌な圧も、外で済ませることもNG。会話・触れ合い・セルフという選択肢がある
今日やること。次の妊婦健診のとき、妻と一緒に医師に「性生活はどうですか」と聞く予定を決めろ。聞くのが恥ずかしいなら、「夫が気にしているので」と妻に言ってもらえばいい。
あわせて読みたい
参考にした公的資料
- MSDマニュアル家庭版「前置胎盤」
- MSDマニュアル家庭版「切迫早産」
- 豊中市「妊娠中に気をつけたい症状(切迫流産・切迫早産)」(妊婦向け資料)
- 日本産婦人科医会 第108回記者懇談会資料「妊娠中の性感染症に関する実態調査」(2017年)
- 厚生労働省「性感染症報告数(2004年~2024年)」
- 厚生労働省「性感染症」(保健所の匿名・無料検査の案内)
最終確認日:2026年10月
このテーマの全体像:女性の体と性のガイド(男性向け)
性交痛・閉経・生理・妊娠中産後の体と性を男が知る。前後に読むならこのあたり。

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