ホテトルとは?ホテルトルコの略・売春防止法との関係とデリヘルへの流れを解説

※本記事は歴史・文化の解説であり、特定の業者・サービスを紹介するものではありません。歴史には諸説あり、年号や呼び名は資料によって異なる場合があります。

「ホテトル」は、1980年代に広まった、ホテルに女性を送り届ける形の売春商法を指す俗称だ。店舗を持たずに電話で受け付ける仕組みは、のちのデリバリーヘルス(デリヘル)につながる原型の一つとされる。この記事では利用方法には触れず、名称の由来、売春防止法や風営法との関係、取締りの流れ、現在の業態への移り変わりを、警察白書や法令などの公的な資料を軸に整理する。

ホテトルとは

「ホテル」と「トルコ風呂」を合わせた俗称店舗を持たない派遣型の売春商法売春防止法の周旋・管理売春などで取締りの対象1998年の風営法改正で合法の「無店舗型」業態が誕生警察白書の用語は「派遣型」「デートクラブ」
目次

語源と背景|「ホテル」と「トルコ風呂」の合成語

ホテトルは「ホテル」と「トルコ風呂」を組み合わせた言葉とされる。『デジタル大辞泉』は、ホテルにいる客のもとへ女性を送り届ける売春の商法の一つと説明し、業者が電話を受け付け、女性が客の部屋を訪ねる仕組みだと述べている。トルコ風呂は、のちにソープランドと呼ばれるようになった個室付き浴場の旧称で、1984年に名称が改められたとされる(詳しくはトルコ風呂からソープランドへの歴史を参照)。

背景には、戦後の法制度の流れがある。売春防止法は1956年(昭和31年)5月に公布され、1957年4月に施行、刑事処分の規定は1958年4月に適用が始まった(売春防止法の歴史)。公娼制度は終わったが、個室付き浴場は1966年(昭和41年)の風俗営業取締法の改正で、営業地域などを規制する対象になった。こうして店舗型の営業が規制されていくなかで、警察の目にとまりにくい別の形が模索された、というのが大づかみな流れである。

一部の解説は、1980年代に「マントル」と呼ばれる、マンションの一室を使う営業が現れ、近隣の苦情や摘発が相次いだ結果、より目立たないホテトルへ移っていったと説明している。ただし、この説明は出典の確認が難しいとされる解説に基づくもので、断定はできない。

仕組み|店舗を持たない「派遣型」

ホテトルの特徴は、実店舗がないことだ。解説によれば、客はラブホテル街の公衆電話などに貼られたチラシの番号に電話し、業者が女性をホテルに派遣する形が一般的だった。女性が受け取った代金の一部を後で店に納める方式で、店舗や設備に費用がかからないため、開業の資金がほとんど要らなかった。そのため、風俗の経験がない人が参入する例もあったとされる。

この「店がない」という性質は、取締りを難しくした。連絡先の電話番号は転送電話などで頻繁に変えられ、同じ経営者が同じ番号で複数の看板を使い分けることもあったという。警察白書も、売春事犯の手口が、客との連絡に転送電話や携帯用無線電話を使うなど巧妙化していると繰り返し指摘している。また警察白書は、平成4年の売春事犯の総検挙人員に占める暴力団勢力の割合を16.1%と記し、売春が暴力団の資金源になっているとみている。

年表|トルコ風呂の規制から無店舗型の届出制まで

年 出来事
1956年5月 売春防止法を公布(1957年4月施行、刑事処分は1958年4月から)
1966年 風俗営業取締法の改正で、個室付浴場などが規制の対象に
1984年 トルコ風呂がソープランドに改称されたとされる。風営法を大幅改正(1985年2月施行)
1985年(昭和60年) 昭和60年版警察白書が「デートクラブ」「個室マッサージ」などを法規制の対象外の業態と記述。同年の売春防止法違反の検挙は1万1,617件
1986年2月 東京で電話ボックスのピンクチラシ一掃作戦が始まったとされる
平成元〜3年 警察白書:売春事犯の主流は「デートクラブに代表される派遣型」(平成2年は総検挙件数の91.6%)
1998年5月8日 風営法の一部改正法(平成10年法律第55号)を公布。無店舗型性風俗特殊営業が新設
1999年4月 改正風営法が施行され、無店舗型・映像送信型の届出制が始まる
2003〜2006年 歌舞伎町の摘発、2005年の都条例改正、2006年の改正風適法施行を経て店舗型の風俗店が激減し、無店舗型が増加したとされる

法律との関係|売春防止法と風営法のあいだ

ホテトルを理解するには、二つの法律の役割の違いを知っておく必要がある。売春防止法は、売春を「対償を受け、または受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と定義し(第2条)、売春の周旋(第6条)、場所の提供(第11条)、管理売春(第12条)などを処罰する。女性を客のもとに送り込み、代金から取り分を得る仕組みは、周旋や管理売春にあたりうるため、取締りは主にこの法律で行われた。

一方の風営法は、営業を許可制や届出制のもとに置いて管理する法律である(風営法の歴史)。1984年(昭和59年)の改正(1985年2月施行)で、個室付浴場、ラブホテル、アダルトショップなどの性風俗に関する営業が「風俗関連営業」として届出制になった。ただ、売春そのものを前提にした営業は、届出制の枠組みには馴染まないと考えられる。FRIDAYの連載記事は、ホテトルが「明らかな違法行為」だったため新風営法の規制対象には入らず、集中的な摘発を受けたと説明している。

摘発と規制の流れ|チラシ、名称、取締りの変化

警察白書の用語に、ホテトルという言葉は出てこない。白書は売春事犯を「街娼型」「管理型」「派遣型」に大別し、昭和60年は派遣型が全検挙件数の90.0%、61年は90.1%、62年は92.2%、63年は93.2%、平成元年は92.4%、2年は91.6%、3年は87.9%を占めたと記している。FRIDAYの記事によれば、新風営法の施行後、取り締まる側は「デートクラブ」を派遣型売春の総称のように使い、業者の側も「DC」「エスコートクラブ」など呼び名を変えていった。ホテトルは、公的な統計では「派遣型」や「デートクラブ」に含まれて数えられていたと考えられる。

取締りの対象は、女性を派遣する業者だけでなく、客を集める手段にも広がった。警察白書(平成元年版)は、昭和63年にチラシやビラを使う手口が目立つと書き、同年2月に大分県警が公衆電話ボックスにチラシを大量に貼って売春の誘引をしていたデートクラブ経営者ら7人を売春防止法違反で検挙した事例を紹介している。平成5年4月には岡山県で、ピンクビラの印刷業者が売春防止法違反の幇助で検挙された例も白書に載っている。FRIDAYの記事は、チラシの配布は以前は軽犯罪法や道路交通法で摘発されていたが、新風営法の施行後は売春周旋・幇助が適用されるようになったとしている。

1986年2月には、東京で電話ボックスのピンクチラシを一掃する作戦が始まった。5月に東京サミットを控え、「売春ニッポン」のイメージを消す狙いがあったとされる。同じ記事は、摘発を逃れようと、本番がなければ逮捕されないとしてSMクラブを装う店が続出したとも伝える。取締りが強まるたびに、看板や形を変えて続く、というのがこの時期の特徴だった。

1998年の風営法改正とデリヘルの誕生

転機は1998年(平成10年)の風営法改正である。同年5月8日に公布された法律第55号は、「性風俗特殊営業」を店舗型、無店舗型、映像送信型の三つに整理した。無店舗型性風俗特殊営業は、人の住居や宿泊施設で、異性の客の性的好奇心に応じて「接触する役務」を提供する営業のうち、役務を行う者を客の依頼で派遣する形のものと、法律の条文で定義された。営業者は公安委員会への届出が必要で、18歳未満の客を相手にすることは禁じられた。施行は1999年4月とされる。

ここで注意したいのは、これが売春の合法化ではないという点だ。届出の対象になったのは「接触する役務」の派遣という営業であり、売春防止法が禁じる行為が認められたわけではない。「デリバリーヘルス」という名称は、改正法で届出の対象になった際に、風俗情報誌の発行元が考案した和製英語だとされる。平成12年版の警察白書によれば、平成11年の無店舗型性風俗特殊営業の事務所数は3,146(派遣型ファッションヘルスや、アダルトビデオなどの通信販売を含む)で、映像送信型は229だった。

衰退と現在|携帯電話、店舗型の減少、2005年改正

ホテトルが衰えた理由として、解説は携帯電話の普及と公衆電話の減少を挙げる。チラシと公衆電話に頼る客集めが成り立ちにくくなった一方、合法の枠組みである届出型のデリヘルが整ったことで、無店舗型の派遣業は「届出をする形」へ移っていった。ホテトルから無店舗型のホテルヘルスやデリヘルに移る例がみられたとする説明もある。

2000年代に入ると、東洋経済オンラインの記事が整理するとおり、2003年の歌舞伎町での大規模な摘発、2005年の東京都条例の改正、2006年の改正風適法の施行によって、ソープランドなど店舗型の風俗店が激減した。店舗型は深夜0時以降の営業ができないのに対し、デリヘルは夕方から早朝に営業するものが多い、という違いも指摘されている。愛媛県の条例改正資料には、デリヘルの全国の営業所数が平成15年末に1万6,864、平成16年末に2万1,570とある。

2005年の改正(平成17年法律第119号、2006年5月1日施行)は、人身取引の防止と違法営業の抑止が目的とされた。経営者に接客従業者の国籍や在留資格を確認する義務が課され、受付所を設けて営む無店舗型については、店舗型と同様に営業区域や営業時間を制限できるようになった。平成18年版の警察白書は、17年末の性風俗関連特殊営業の届出数が4万2,583で、派遣型ファッションヘルス等が5年間で3.1倍になったと書く。平成19年版は、改正の施行に伴いその届出数が大幅に減少したとしている。ホテトルの時代から続く「訪問型」の業態は、いまは法の枠内で管理される形に姿を変えている。

まとめ

ホテトルは「ホテル」と「トルコ風呂」を合わせた俗称で、店舗を持たずに女性をホテルへ派遣する売春商法を指した。1984年の風営法改正は性風俗関連営業を届出制にしたが、売春を前提とするホテトルはその枠外に置かれ、売春防止法の周旋・管理売春などで取り締まられた。警察白書では「派遣型」「デートクラブ」として数えられ、昭和60年代から平成初めにかけて売春事犯の約9割を占めた。1998年の改正で届出制の「無店舗型性風俗特殊営業」が生まれ、デリヘルという名称が定着していく。ただし、これは売春の合法化ではない。

よくある質問

Q. ホテトルとは何ですか?
A. 「ホテル」と「トルコ風呂」を合わせた俗称で、『デジタル大辞泉』は、ホテルにいる客のもとへ女性を送り届ける売春の商法の一つと説明しています。店舗を持たない派遣型の形をとっていました。

Q. いつ広まったのですか?
A. 解説では1980年代とされます。警察白書は「ホテトル」という語を使っていないため、公的な統計から正確な開始年を示すことはできません。昭和60年代の白書には、デートクラブに代表される派遣型が売春事犯の約9割を占めたとあります。

Q. なぜ法律で取り締まられたのですか?
A. 売春防止法は、売春の周旋や場所の提供、管理売春などの助長行為を処罰します。女性を派遣して客に引き合わせる仕組みはこれらにあたりうるため、同法違反で摘発されました。

Q. 風営法の対象にはならなかったのですか?
A. 1984年の改正(1985年2月施行)で性風俗関連営業は届出制になりましたが、売春を前提にしたホテトルは届出で適法にできる営業ではなく、規制の対象外の違法行為として扱われたと解説されています。

Q. デリヘルとはどう違うのですか?
A. 1998年の風営法改正で、客の依頼で人を派遣して「接触する役務」を提供する営業が「無店舗型性風俗特殊営業」として届出制になりました。この枠組みのもとでの営業がデリバリーヘルスです。売春防止法が禁じる行為が認められたわけではありません。

Q. ホテトルはなぜ減ったのですか?
A. 携帯電話の普及と公衆電話の減少で、チラシと公衆電話に頼る客集めが成り立ちにくくなったとされます。あわせて、無店舗型が届出制の業態として整い、取締りも強まったことが背景にあります。

参考にした資料

  • 昭和60年 警察白書 第5章(警察庁)https://www.npa.go.jp/hakusyo/s60/s600500.html
  • 昭和61年・62年・63年、平成元年・2年・3年・4年・5年 警察白書 生活安全の章(警察庁)https://www.npa.go.jp/hakusyo/s61/s610500.html ほか
  • 平成12年 警察白書(警察庁)https://www.npa.go.jp/hakusyo/h12/h120204.html
  • 平成18年版・19年版・20年版 警察白書「良好な生活環境の保持」(警察庁)https://www.npa.go.jp/hakusyo/h18/honbun/hakusho/h18/html/i2360000.html
  • 平成9年版 犯罪白書 第1編/第2章/第2節/5「風俗関係法令」(法務省)https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/38/nfm/n_38_2_1_2_2_5.html
  • 「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」(平成10年法律第55号)衆議院制定法律情報 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/h142055.htm
  • 愛媛県「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例の一部を改正する条例」資料 https://www.pref.ehime.jp/uploaded/attachment/22117.pdf
  • Internet Watch「平成16年における風俗警察の現状について」報道(2005年4月19日)https://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2005/04/19/7334.html
  • FRIDAYデジタル「デリヘル27年史①前編」https://friday.kodansha.co.jp/article/439542
  • 東洋経済オンライン https://toyokeizai.net/articles/-/199945
  • コトバンク「ホテトル」(デジタル大辞泉)https://kotobank.jp/word/ホテトル
  • Wikipedia「ホテトル」「風俗店の歴史」「デリバリーヘルス」「売春防止法」(いずれも出典不足の注記があり参考程度)
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