吉原の名前は誰でも知っている。だが、小樽や函館、仙台、水戸、松本、浜松となると、どこにどんな遊里や花街があったのか、ほとんど語られない。同じ「花街」でも、向島や神楽坂、金沢は遊廓とは別の成り立ちだ。
このページは、北海道・東北、関東、甲信越・北陸、静岡の旧遊廓と花街30本をまとめた地図だ。地域の一覧記事、東京の吉原や赤線、東京の花街、港町や温泉地、城下町までを、確認できた資料の範囲で整理している。西日本と、遊廓・花街・赤線の用語の概説は別の柱にある。
このページの使い方
地域で探すなら、ロードマップの地域の行から入れ。言葉の違いが気になるなら、先に西日本編の概説で用語を押さえるとスムーズだ。各記事の中身は、グループごとの要点で2行ずつ確認できる。
要点
- 遊廓と花街は別物。向島・神楽坂・古町・金沢の茶屋街は、芸妓の町として読む
- 町の移転は、大火のたびに起きた例が多い。小樽、函館、青森、飯坂、秋田などで繰り返し出てくる
- 吉原は、元吉原と新吉原で場所も時代も別。1923年の弁天池の出来事、1958年の終わりまで年表で追える
- 群馬は廃娼県で、乙種料理店という形が実態だった。遊廓が語られにくい理由がそこにある
- 年号や数字は資料で割れる。川崎の移転年は1902・1903・1904年と分かれ、空襲の死者数も資料ごとに違う
- 営業が続く地域は、歴史の確認だけ。店の紹介や利用の案内には触れない
悩み別・読む順番ロードマップ
知りたい地域や町に近い行から入れ。30本すべてが、どこかの行に載っている。
| 悩み・場面 | 読む記事 |
|---|---|
| 北海道・東北の旧遊廓を一覧で | 北海道・東北の一覧 |
| 小樽・函館の港町 | 小樽、函館 |
| 青森・秋田・鶴岡の城下と港 | 青森、秋田・川反、鶴岡 |
| 仙台と福島の温泉地 | 仙台、飯坂温泉 |
| 茨城・栃木・群馬の色街 | 水戸、宇都宮、群馬の廃娼県 |
| 関東の旧遊廓を一覧で、東京の跡 | 関東の一覧、東京の旧赤線・旧遊廓跡 |
| 吉原の歴史、宿場、赤線の鳩の街 | 吉原、千住宿、鳩の街 |
| 東京の花街(芸者と料亭) | 向島、深川、神楽坂、円山町 |
| 横浜・川崎 | 黄金町・真金町、川崎・堀之内 |
| 甲信越・北陸を一覧で、新潟と松本 | 中部・北陸の一覧、新潟・古町、松本 |
| 金沢の茶屋街、三国の湊町 | 金沢の三茶屋街、三国 |
| 静岡・清水、浜松、熱海 | 静岡・清水、浜松、熱海 |
北海道・東北
北前船やニシン景気の港町、城下町、温泉地。大火で町が動いた例が多い。まず一覧記事で全体をつかめ。
- 北海道・東北の遊郭跡|旧遊廓の場所・成り立ち・今の姿を一覧で解説 北海道・東北の27地点を、札幌の薄野と白石、函館の大門、仙台、山形、福島の宿場筋などについて、成り立ち・終わり・跡地の現状まで一覧にした。
- 小樽の花街・遊廓とは?ニシン景気と花園・松ヶ枝の歴史と今 1871年に金曇町で公認され、大火のたびに住ノ江町、松ヶ枝町へ。ニシン景気を背景にした料亭と芸者の花街、大火後の繁華街・花園。
- 函館の遊廓とは?山ノ上・蓬莱町・大森遊廓の歴史と大門の今 幕末の山ノ上町に始まり、蓬莱町、大森町へ。1907年の大火後に集約された大森遊廓、「大門」の地名の由来、1958年の廃止。
- 青森の遊郭跡とは?柳原・旭町(森紅園)の歴史・場所・今の姿 塩町から柳原、1910年の青森大火を経て旭町(森紅園)へ移った。新町との違い、昭和初期の規模、1958年の終わり。
- 秋田・川反とは?花街の成り立ちから歓楽街へ、歴史・場所・今の姿を解説 久保田城下の外町に生まれ、1886年の俵屋火事を機に花街となった。大正の最盛期、秋田美人の評判、2014年のあきた舞妓の復活。
- 鶴岡の遊郭・花街とは?七日町・八間町と双葉町の歴史・場所・今の姿 庄内藩の城下町・七日町と八間町の旅籠町から貸座敷へ。1929年の双葉町への移転、1958年の閉業、湯田川と温海の遊所。
- 仙台の遊廓とは?国分町・常盤丁・小田原の歴史と稲荷小路・今の姿 1869年に国分町で始まり、常盤丁、小田原の新常盤町へ移された。稲荷小路との関係、東北一の規模、1946年の廃止。
- 飯坂温泉の若葉遊廓と花柳界とは?歴史・場所・跡地の今の姿 湯女が出入りした湯治場の時代、明治の大火と若葉町への集約、昭和初期の7楼、戦後の廃止までを整理した。
関東(茨城・栃木・群馬と概観)
公認の遊廓が長く置かれなかった水戸、宿場から新地へ移った宇都宮、廃娼県の群馬。関東は、東京以外にも見るべき町が多い。
- 水戸の遊廓とは?奈良屋町・大工町の色街の歴史・場所・今の姿 公認の遊廓が長く置かれなかった理由、水戸駅そばの奈良屋町の私娼街、大工町・竹隈町の花街、大火、空襲、1958年の終わり。
- 宇都宮の遊廓(亀廓)とは?歴史・場所・跡地の今の姿と戦後の赤線 宿場の飯盛旅籠から1894年の新地への移転、亀廓の名前の由来、剣宮町の私娼街、戦災と戦後の赤線、1958年の終わり。
- 群馬の遊廓とは?廃娼県の歴史と前橋・高崎の色街の跡と今の姿 1882年の県会の廃娼建議から1893年末の実施まで。乙種料理店という実態、前橋の榎町・紺屋町・萱町、高崎の柳川町。
- 関東の遊郭跡|吉原・洲崎・玉の井ほか旧遊廓の場所と今の姿を一覧で解説 吉原・洲崎・新宿・品川・千住・板橋・玉の井・鳩の街・横浜・八王子など17地点。碑や文化財、町名に残る名残もまとめた。
東京の遊廓・赤線・花街
吉原と赤線、宿場、そして遊廓とは別に育った芸妓の町。東京だけで成り立ちの違う町が並ぶ。
- 東京の旧赤線・旧遊廓跡とは?吉原・洲崎・玉の井を歩く歴史と今の姿 吉原・洲崎・玉の井・鳩の街・新宿二丁目・亀戸の順に、成り立ちと終わり、今の街並み、撮影や住民への配慮を整理した。
- 吉原遊廓の歴史|元吉原から新吉原、売春防止法までと今の吉原 元吉原と新吉原の違い、明暦の大火、1923年の弁天池の悲劇、1958年の終わりを年表で。現況を公的資料でどこまで言えるかも示す。
- 千住宿とは?飯盛女と小塚原刑場の歴史・場所・今の街並みを解説 1625年に開かれた日光道中の初宿で、江戸四宿の一つ。飯盛女と千住柳町の遊廓、小塚原刑場と回向院、本陣跡など。
- 鳩の街とは?向島の赤線の歴史・場所・今の鳩の街通り商店街の姿 東京大空襲で焼けた玉の井の業者が1945年に開いた向島の赤線地帯。カフェー建築、吉行淳之介の小説、1958年の終わり、商店街へ。
- 向島の花街とは?向島芸者と料亭の歴史・場所・墨堤と今の姿を解説 隅田川の墨堤の桜と料理屋を背景に明治期に育ち、いまも東京六花街の一つ。向島芸者と料亭、見番、戦前の最盛期から東京大空襲まで。
- 深川の花街とは?辰巳芸者と岡場所の歴史・場所・今の門前仲町を解説 富岡八幡宮の門前に生まれ、辰巳芸者・羽織芸者と呼ばれた。岡場所から天保の改革、木場の移転による花街の終わりまで。
- 神楽坂の花街とは?歴史・場所・芸者と石畳の路地の今の姿を解説 寺町の門前の岡場所から育ち、大正から昭和初期に東京有数の規模に。昭和4年の芸者552人、石畳の路地、2023年の料亭と芸妓の数。
- 渋谷・円山町とは?花街からホテル街・ライブハウス街へ変わった歴史と今の姿 明治20年ごろの芸者屋に始まり、1913年に三業地となった。戦災、料亭の衰退、ホテル街化、ライブハウス・クラブ街への変化。
神奈川・甲信越・北陸
港町、北前船の湊町、城下町、茶屋町。歴史の流れも現在の姿も、町ごとにまったく違う。
- 黄金町・真金町とは?戦後の色街から浄化とアートの街へ、歴史と今 真金町は遊廓から赤線へ、黄金町は高架下の青線から2005年の浄化とアートのまちづくりへ。別々の道をたどった。
- 川崎・堀之内とは?南町の遊廓から続く色街の歴史・場所・今の姿 川崎宿の飯盛旅籠から南町の遊廓へ、戦後の堀之内へ。明治の貸座敷、川崎大空襲、1958年。移転年や死者数が資料で分かれる。
- 中部・北陸の遊郭跡|旧遊廓の場所・成り立ち・今の姿を一覧で解説 新潟・金沢・富山・甲府・長野・岐阜・静岡・名古屋など17地点について、成り立ちと終わり、現在の町名や残る文化財を一覧にした。
- 新潟・古町花街とは?古町芸妓と料亭、湊町の歴史・場所・今の姿 北前船の湊町の土台、1898年に遊廓と花街が分かれた経緯、古町芸妓と市山流、国登録有形文化財の料亭建築。
- 松本の遊廓(横田遊廓)と裏町の花街とは?歴史・場所・今の姿 1877年の県会決議による成立、二業組合と芸妓の町、西堀の赤線、新浅間温泉への転業、松本城天守保存との縁。
- 金沢の三茶屋街とは?ひがし・にし・主計町の違いと歴史・今の街並み ひがし・にし・主計町。1820年の茶屋町の開設、一度の廃止と再公認、町名の復活、重要伝統的建造物群保存地区などの違い。
- 三国の遊郭とは?出村遊里・小女郎と北前船の湊町の歴史・場所・今の姿 北前船の湊町、丸岡藩領の茶屋町、最高位の小女郎と遊女俳人の哥川、近代の衰退、思案橋と登録文化財の町並み。
静岡
駿府の公認遊廓、港の花街、東海道の宿場町、温泉芸妓の町。静岡県だけで、4つの異なる形がある。
- 静岡・清水の花街とは?歴史・場所・二丁町遊廓と跡地の今の姿 駿府の二丁町遊廓の起源と1945年の終わり、静岡の見番と芸妓、巴川河口から江尻へ移った清水の花街。資料で食い違う点も整理。
- 二葉遊廓(浜松)とは?歴史・場所・鴨江旅館街と跡地の今の姿 旅籠町・伝馬町の近世遊廓から1922年の集団移転、昭和初期の貸座敷22軒、芸妓中心の千歳町の花街、戦後の赤線。
- 熱海の花街とは?熱海芸妓と見番の歴史、昭和の温泉歓楽街から今の姿まで 明治10年に遊芸師が宿の客に稽古を付けたことから始まる温泉芸妓の町。1950年の熱海大火、1954年の見番落成、昭和30〜40年代の最盛期。
町の型の早見表|遊廓・花街・宿場・赤線
同じ「色街」の一言でくくると、成り立ちの違いが見えなくなる。このガイドに出てくる町を、型ごとに並べた。1つの町が複数の型をまたぐことも多いから、目安として使え。
| 型 | 出てくる町の例 | 記事 |
|---|---|---|
| 公認・指定された遊廓 | 吉原(元吉原と新吉原)、仙台、函館、小樽、青森 | 吉原、仙台、函館 |
| 宿場の飯盛女から | 千住宿、川崎宿、宇都宮 | 千住、川崎、宇都宮 |
| 芸妓の町(花街) | 向島、深川、神楽坂、新潟の古町、金沢の茶屋街、熱海 | 向島、古町、金沢 |
| 北前船・港町の遊里 | 鶴岡、新潟、三国 | 鶴岡、三国 |
| 戦後の赤線・青線 | 鳩の街、黄金町 | 鳩の街、黄金町 |
| 花街から別の街へ変わった町 | 円山町(ホテル街・ライブハウス街)、秋田の川反(県内一の歓楽街) | 円山町、川反 |
町が動いたきっかけ別の例
移転や転機を横に並べると、大火と戦災と法令が町を動かしてきたことが分かる。年号の細部は各記事で確かめろ。
| きっかけ | 例 | 記事 |
|---|---|---|
| 大火 | 小樽は大火のたびに移り、函館は1907年の大火後に大森へ集約、青森は1910年の大火後に旭町へ移った。秋田の川反は1886年の俵屋火事、熱海は1950年の大火が転機 | 小樽、函館、青森 |
| 戦災 | 東京大空襲で焼けた玉の井の業者が鳩の街を開いた。川崎大空襲は1945年4月15日 | 鳩の街、川崎 |
| 法令・制度 | 群馬の廃娼建議(1882年)から1893年末の実施。1958年の売春防止法 | 群馬 |
| 都市の事情 | 仙台は国分町から常盤丁、新常盤町へ。鶴岡は1929年に双葉町へ、浜松は1922年に鴨江へ集団移転 | 仙台、鶴岡、浜松 |
| 湊・産業の変化 | 三国は築港、鉄道、漁港への転換で衰退。小樽はニシン景気に支えられた | 三国 |
資料を読むときの注意|年号や数字が割れるところ
- 川崎の南町への移転年は、1902年・1903年・1904年と資料で分かれる。堀之内を赤線とする資料と青線とする資料もある
- 川崎大空襲の死者数は、768人、1,001人、1,520人などと資料ごとに違う。戦前の堀之内の店数は、公的資料で確認できなかった
- 静岡・清水の遊廓と花街は、資料で食い違う点が整理されている。成立の年や数字を1つに決めつけている記事は疑え
- 吉原の終わりは1958年だが、資料によっては1957年とされる。現況は、公的資料で言える範囲を確かめてから読め
よくある質問
吉原は、いつ、どこにあった?
元吉原と新吉原は別の場所で、別の時代だ。明暦の大火を経て新吉原へ移り、1923年に弁天池の悲劇があり、1958年の売春防止法で終わった。年表で追える。 詳しくは吉原の歴史の記事へ。
花街は、遊廓と同じもの?
別の成り立ちだ。向島や神楽坂は芸妓の町として育ち、新潟の古町は1898年に遊廓と花街が分かれた。金沢のひがし・にし・主計町は、遊廓ではなく茶屋町・茶屋街として読む。 詳しくは向島の記事、古町の記事、金沢の記事へ。
群馬で遊廓が語られにくいのは、なぜ?
1882年の県会の廃娼建議から1893年末に実施された廃娼県だったためだ。実態は乙種料理店という形で、前橋の榎町・紺屋町・萱町、高崎の柳川町が語られる。 詳しくは群馬の記事へ。
渋谷の円山町や横浜の黄金町は、昔は何だった?
円山町は明治20年ごろの芸者屋に始まり、1913年に三業地となった花街で、のちにホテル街、ライブハウス街に変わった。黄金町は戦後の高架下の青線から、2005年の浄化とアートのまちづくりへ進んだ。営業の案内はしない。 詳しくは円山町の記事、黄金町の記事へ。
年号や数字が記事によって違うのは、なぜ?
出典ごとに数えるものが違うからだ。川崎は移転年が3通り、空襲の死者数も3通り以上ある。子記事は、どの出典の数字かを書いて併記している。 詳しくは川崎の記事、関東の一覧の記事へ。
関連する他の柱ページ
- 遊廓・花街・赤線の歴史ガイド(概説と西日本編) 遊廓と花街の違い、赤線・青線・白線、文化財の建物の概説と、近畿から九州・沖縄までの旧遊廓はこちらだ。
- 性の俗説ファクトチェック・体のしくみ・雑学大全 花魁、間夫、夜這い、春画など、遊里の言葉と風習の由来を辞典で確かめた記事がそろっている。
- 日本の性文化史ガイド(成人映画・出版・表現史) 遊廓や花街の歴史の次に、成人映画や出版、表現の歴史を知りたいならこちらだ。
まとめと次の一歩
東日本の遊里と花街は、港町、城下町、宿場、温泉地と、成り立ちがばらばらだ。そのぶん、大火や戦災や法令で町が動いた筋道を並べると、見え方が変わる。まず気になる地域の行から1本読んで、足りない用語は西日本編の概説で補え。
最終確認日:2026年10月
